山田正紀です。
一連のゲームノヴェルものの最後になります。
巻頭は「地下鉄ゲーム」。
現金強奪に挑むことにしたカップルが地下鉄線路内に逃げ込んで、鉄道マニアの刑事課長と知的闘争をするゲームです。
千代田線と有楽町線を結ぶ国会議事堂付近の脇線が登場します。と言うと、「交渉人・真下正義」を思い出しますが、そのものずばりの線路です。桜田門の真下で警察を出し抜くというのがインパクトあるのか、ここでも登場。
地下鉄に乗ってデートしていたというカップルと、鉄道マニアの刑事課長のどちらの知識と知恵が勝利するか一気に読ませます。意外なことにカップルが逃げ切って終ります。
「真夜中のビリヤード」
孤独な青年が入り浸る場末のビリヤード場。そこに転がり込んでくる男と女。
いかにも山田正紀的な造形です。
「四十キロの死線」
息子と折り合いの悪いやり手の経営者。息子の新会社出資を拒絶したら、なんと優秀なエンジニアである息子に愛車に仕掛け爆弾をセットされてしまいます。一度、時速40キロを越すと、次に40キロを下回った時に爆発するというのです。要は映画「スピード」です。
運転しながら必死に知恵を巡らし、どういう仕組みで減速を検知するかを考え、爆弾を出し抜く方法を試みますが、どれも想定され対策されており次第に追い詰められていきます。
しかし、最後には意表を突いた方法で息子を出し抜いて反撃に転じます。
「ひびわれた海」
首都圏直下型大地震の噂を意図的に流す大企業。そこに勤める女性が地震は本当に来るという投書を週刊誌にする所から始まり、本当に地震が起きて湾岸エリアが液状化する大惨事までです。
「熱病」
バブル全盛期。世界の名画を日本が投機的に買い漁っていた時代、それを政治献金に利用する企業と政治家。それを出し抜いて名画を盗もうとする数人の一匹狼(日本語が変)の若者たち。
「地下鉄ゲーム」が群を抜いて面白いので、それだけ読めば良いのかも。次点は「四十キロの死線」。
脇線の話しは、こちらが詳しいです。