×カラマーゾフの兄弟5を読む

 ついにやって来ました最終巻。

 最終巻はエピローグと、訳者による解題なのですね。本編としては4巻の判決が出た所でお終いなんですね。
 解題を読みました。なるほどと思ったのは、アリョーシャがほとんどの重要な場面に参加しているという指摘は「なるほど」と思いました。しかし、書かれなかった続編も含めての発展と収束のグラフは、面白いアイデアとは思いますが、なにせ存在しないものに関する憶測をベースにした考察なので、若干、無理筋な気がしました。ここらへんが、亀山訳に対する批判が鳴りやまない原因なのかなと思って読みました。
 作者は作品によってのみ読者と対峙するべきと思いますし、役者も訳業のみによって対峙するべきで解題で延々と語るという時点であまり好感を持てないのは確かです。
 ただ、主要人物の事件当時の行動ダイヤグラムは読書ノートとしては非常に役立つので、万万が一再読する時には5を手元において読むのが良いのかとは思いました。
 でも、現代語訳でさえリーダビリティは高くなく、異常な分量と合わせて考えると死ぬまでにもう一度読むことはないだろうなと思いました。
 父殺しのミステリーと説明されますが、ミステリー寄りではなく、むしろ神と悪魔、善と悪などの対立する概念の間で苦悩する人々を描く人間ドラマと思いました。その意味で特に3巻辺りはなかなかの読み応えなのですが、4巻の最後の章題が「誤審」になっていることへの納得感のある説明がないのは大いに失望しました。