○黒魚都市を読む

ハヤカワ新SFシリーズ。

久しぶりに予約購入しました。で、タイムリーに読み終えました。

設定が面白そうだったこともありますが、中村融さんの訳業だというのも大きなポイントでした。

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海面上昇が起こって既存の大都市や大国が崩壊した近未来。
グリッドシティと呼ばれる海上構造物都市に住む人々の物語。
ネットウィルスの蔓延でインターネットは崩壊し、謎の症候群ブレイクスも広がっています。貴重な都市の空間は一部の「株主」と呼ばれる黒幕に牛耳られており、ほとんどの人はレ・ミゼラブル(貧民)として暮らしています。

そんな世界で、4人の、一見すると直接の関係のない視点人物の間を頻繁にスイッチしながら物語は語られていきます。
意図的に重要なことを謎として伏せたまま進行していくので、かなり判りにくいです。しかし、世界の手触りも人物の魅力もしっかりしており、リーダビリティも悪くありません。

謎の一端が解き明かされてからは、一気呵成にクライマックスを迎えます。怒涛のように雪崩れ込みすぎて、ちょっと理解が追い付かないくらいです。

いろいろなことが判った状態で再読してみたいと感じる作品です。それほど時間を置かずに再読してみたいと思います。そうすることで、評価は上昇するかも知れません。

 

三部作とかではないのも好感を持てますが、同じ世界設定の別の作品を読みたい気もします。短編はあるようです。