○人間以上を読む

シオドア・スタージョンの代表作です。

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シマックの「都市」を再読した時に、本書も是非とも再読しようと思っていました。

同じような時期に文庫化され、どちらもSFファン必読の書として入門書で紹介されていながら絶版状態だったものです。

矢野徹さんの訳文ですが、リーダビリティは悪いです。

それでも頑張って読んで行くと、中学時代に読んだ時には消化不良だったのが良く判りました。

ホモサピエンスから生まれた集合生命ホモ・ゲシュタルトのお話しです。長編として扱われますが、実際には雑誌掲載の二作目に前後を書き足した連作短編に近いです。

書き足した1、3作目が対になった事件を描いています。

1作目「とほうもない白痴」は、ホモゲシュタルトの中心部分である白痴が、脳の部分に当る赤ん坊の知恵を借りて、世話になった農夫のために人類史上屈指の大発明をしてしまう話しです。フレドリック・ブラウンのようなアイデア短編の趣きで、逆にスタージョンらしくないとも見えます。

3作目「道徳」は、上述の大発明を発見した者を巡る、次世代のホモゲシュタルトメンバーたちの物語です。

そして、3作目の最後に、ホモゲシュタルトの完成が取って付けたように語られて長編としての形を付けています。

1作目を単独の短編として高く評価できるというのが、今回の最大の発見でした。

また、解説にスタージョンの直接の後継者がSRディレーニイだというコメントがあって興味深く読みました。