グレッグ・ベアです。
ベアの長編を読むのはいつ以来でしょうか? このブログを検索しても出てこないので20年くらいは読んでいません。まさか「ブラッドミュージック」以来ではないと思うのですが、そんなはずはないと否定する自信がありません。
アルプスでネアンデルタール人の夫婦と、その子供と思われる新人類の子供のミイラを見つける所から始まります。
本書の最大のテーマは、進化は漸進的ではなく突発的なものだと思われる証拠が頻繁に見つかるのはなぜか?‥です。ネアンデルタールから新人類(われわれ)が生まれて入れ替わるのには、ほんの1~2世代しか掛かっていないのではないか? という出発疑問です。
そして、それはゲノム中の現在は役に立っていない部分に埋もれている内在性レトロウィルスがなんらかのトリガーで発現して新種を一斉に妊娠させるからではないかという仮説で上下二巻本のボリュームを押し切ってきます。
重厚な作品ですがリーダビリティは非常によく快適に読み終わりました。また、ベア作品を読む日は来ることでしょう。
今まさにわれわれが次の人類に置き換えられようとする事態が発生するのですが、古典的進化論を信奉する科学者は認めようとしません。そればかりか、レトロウィルスから発現した古代の伝染病が蔓延し始めたのだと、CTC(感染症予防センター)や副大統領はパニック的な対応をします。
このパンデミック・パニック小説的な所が、今読むと非常にタイムリーで、ぐいぐいと引き込まれます。これにまあまあの出来栄えのラヴストーリーが並走します。
それ以上に感染病対策プロジェクトの中の政治的権力闘争が興味深く読めます。「シン・ゴジラ」の省庁間の押し付け合いと似たような面白さです。
本書には「ダーウィンの子供たち」という続編があるのですが、訳業が遅かったので原書で読まれた方の感想がこちら。
http://www.hi-ho.ne.jp/tomita/PaperBacks/Darwin%27sChildren.htm
これを読む限り、続編は骨太の進化ミステリーではなくなってしまうようなので、暴騰(上下巻とも2000円以上)していることもあり、探しません。固く誓います(笑)