☆ハローサマーグッドバイを読む

bqsfgame2014-09-15

サンリオSF文庫版です。
マイケル・コーニーの青春SFの傑作。一時期は評判の割に入手難で異常高騰した本です。川崎テニスクラブ時代に、同じくSFファンのA君が、「いしださんの遺書に、もしもの時はハローサマーグッドバイはA君に譲ると書いておいてくださいね」と真剣に頼まれたりしたものです。今となっては新訳版が再出版されたこともあり、そんなに騒ぐほどの稀覯本ではなくなったかと思いますが。
個人的には、コーニーの最高傑作は英国SF協会賞の「ブロントメク!」だと思います。しかし、青春小説としての純粋さや泣かせ方から本書を推す人が多いのも理解できます。本書は、異星の異星人の物語なのですが、そんなことはどこ吹く風、自分の青春と重ねて読む人が多いでしょう。ボーイミーツガール・インサマーの典型で物語は推移します。しかし、異星環境の残酷な真実が中盤以降に明らかに。そして、結末は容赦がありません。泣かせる話の多くに共通しますが、作者が主人公に対して容赦ない仕打ちを与える本の一つです。その意味で、必ずしも読後感は良いとは言えず、とても良い本なのに頻繁に再読しにくいところがあります。
久しぶりに読みましたが、読みにくさでは定評のあるサンリオ文庫の版組をものともせずにアッと言う間に読み終わってしまう筆致は名人芸です。今回再読したのは、近年発売された続編を読むにあたっての前哨編としてです。