〇最後の敵を読む

ずっと山田正紀作品の再読をしてきましたが、ゴールまで来ました。

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SFアドベンチャー鳴り物入りで始まった連載、第3回日本SF大賞受賞作です。

非常に記憶に残る作品でした。

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しかし、連載終了後に本として読むのは、これが2回目だと思います。割と、難解で読みにくかった印象があるからです。

しかし、今回、再読してみたら非常に読みやすくて驚きました。

雑誌連載時の心証が悪かったのですかね。

インポテンツの青年がポルノを見ても興奮できずに悩むシーンから始まります。

彼は遺伝子学の研究所に勤務しているのですが、その現実は象徴でしかなく、PKD作品のように現実が音を立てて崩壊し、当該研究所は木星を目指す大腸菌号であることが判ってきます。

赤いマフラーの美青年(醍醐銀)がライヴァルとして登場してくるのですが、いささか類型的に過ぎるでしょうか。

テレホンクラブのフィリピン人女性とか、美人精神分析医の彼女とか、なんとなく造形がちょっと鼻につく感じはしないでもありません。

しかし、進化と戦うというあり得ないテーマは、ちゃんと具体的なイメージを持つようになり木星の大赤斑でクライマックスを迎えます。

また、核力、弱い相互作用、電磁気力の3つと対になる重力、進化力、愛という物理学体系も興味深いものがあります。ここで愛が出てくるのが山田正紀にしては、ちょっとセンチかなと思います。

主人公とライヴァルは、進化力を検知する能力を持つミュータントだという設定は、かなりの力技ですが、全体として一定の整合性は確保されています。

巻末に鏡明による日本SF大賞選考経過の報告が載っていますが、最後まで2作品同時受賞が議論されたといいます。多分、当時だと栗本薫の「レダ」のことだと思うのですが、確かに同時受賞でも良かったかなと言う気もします。そうすると、SFマガジンとSFアドベンチャーの雪解けにも寄与したかも知れません。