個人的には、「地下鉄サリン事件」以来、久しぶりに見ました。
概して土木系のトピックは迫力がありますが、今回も期待に違わぬ見応えでした。
日本とトルコの友好関係については、映画「海難1890」に詳しい所です。
そんなこともあってか、マルマライ海峡を通る海底トンネルによる地下鉄はトルコの悲願となっていましたが、ボスポラス海峡は潮が強く予測困難でもあり、どこの国のゼネコンも受けなかった中、ついに日本の大成建設がトルコとの混成チームで引き受けることになりました。
まず、ボスポラス海峡の潮の挙動を予測するシミュレーションの作成からスタートしたと言うから気の長い話しです。
ご存じの通りボスポラス海峡は黒海と地中海を結ぶ唯一の海峡で、両者の海面の関係によって激流が一方から他方に流れ込む特性があります。これを予想するシミュレーションを任されたチームは黒海側の気圧の影響が大きいことを見出すまでに大変な苦労をします。
また、海底トンネルと言うと、シールドマシンで掘削するイメージが強いのですが、マルマラでは海底地盤が悪いので潜函を予め組み立てておいて海底に沈めて接続する沈埋工法が選択されました。この潜函を沈めて設置する時に潮に流されてしまうと許容誤差を越えてしまうというのです。その許容誤差、なんと8cm!
潮流シミュレーションチームが明日の午後には潮は止むと予言し、最初の1号潜函が設置される日が来ました。果たして予言通りに潮は一気に弱くなりチャンスが訪れます。しかし、潜函沈降中に潜函に設置されたセンサーが損傷して正確な位置を把握できなくなります。止む無く現場責任者、木村は自ら潜函へと降りて修理と、位置補正指示をすることを決意します。海底60mに沈んでいる真っ暗闇の潜函へと猿梯子を下りていくとき、潜函が軋む音が聞こえて、どこかで漏水していたらという不安が過ったと言います。それでも、誰かに潜れとは言えないし、自分の目で見て位置補正を指示したかったと言うのには、土木エンジニアの意地を感じました。
その頃、工期の遅れがどんどん拡大するプロジェクトに対して日本本社では現場責任者の交代を要求する声が高まっていたというのですが、リーダーの小山は黙って受け止めて一切、下には相談しなかったそうです。