1960大統領を作る方法をソロプレイ

bqsfgame2007-11-06

出張の電車にルールブックを持っていったところ、帰りまでに気持ちよく読み終わることができた。
間違いなく今までに読んだカードドリブンゲームの範囲では一番よく書けているルールブックだと思った。アメリカンシミュレーションゲームのルール記述レベルから、ユーロゲームの記述レベルに移ったという感じだろうか。コンポーネントの立派さと言う面でもユーロゲームの水準だし、良い意味でユーロゲームの影響を受けたアメリカンシミュレーションからの派生ゲームという気がする。
娘が活動を開始してからはゲームはワンナイトで片付けなければならないので、ソロプレイでは終わりまでやることはなかなか難しい。しかし、このゲームは初見で終わりまでできてしまった。そういう意味でもプレイアビリティは抜群に良いと思う。
ゲームのプレイ感自体は、「トワイライトストラグル」と同様にPCマーカーの配置部分だけをやるカードドリブンと言ったところで、部隊機動して戦うカードドリブンと比べて静的で盛り上がりに欠ける気がする。囲碁で言えば布石とヨセだけやっている感じで、中盤戦の戦いの部分がないような感じだろうか。
それでもディベイトを途中に設けてあり、「トワイライトストラグル」よりは後発の分だけ考えられているとは思った。ただ、そこのインパクトは今回のソロプレイでは今一つだった。もう少し効いても良いのではないかなという気がした。逆に最後の投票日は結構なインパクトがあるのだが、今回は両陣営とも上手く活用しきれず。投票結果では史実を翻してリチャード・ニクソンが勝利した。

マイナー州を遊説する意義

大統領選挙ゲームをいずれでもプレイすればすぐに気付くのは、ニューヨーク、カリフォルニア、テキサスなどの大票田の影響力が大きく、一方、非常にマイナーな州は10個くらいまとめないと匹敵する規模にならない。結果として、大票田ばかりに両軍の作戦が集中してしまいがちになる。
特にカードドリブンでカードを交互にプレイしていると、大票田での応酬に終始しがちになるのではないかという懸念を感じる。これは実際その通りなのだが、これを緩和するための工夫がある。それが、地域モーメンタムカードで、これはその地域で自陣営がリードしている州数が多いときにプレイでき、そうするとその州の中立な州を一斉に自陣営に引き込めるというものだ。州数で議論するのでマイナーな州を2個もっている方が大票田を1個持っているより本件に関しては価値が高い訳だ。相手がマイナーな州を遊説しだしたら、その地域でこのドミノ効果なカードを使う準備をしていると疑うのだろう。対策としてはこちらもマイナー州を遊説して、州数でのリードを許さなければ良いわけだ。かくてマイナー州にも遊説が入ることになる。なるほど。

カードドリブンとしての新工夫

最近のカードドリブンは相手イベントをOCカードとして使用すると、相手イベントが発生するというシステムが増えていると聞いた。わたしが実際にプレイしたものでは、「トワイライトストラグル」だけなのだが、確実にイベントが実施されるので、歴史的にあったイベントが確実に反映されるという利点があるのだと思う。
その一方でカードゲームの駆け引きという点では、相手の良い札が自分に来た時には相手がそれを使えないということがカードゲームの多くでは根底にあって利用されているので、その感覚に馴染まないという違和感がある。
この「1960」ではイベントカードをOCで使用するときに、相手はイベントを発生できるのだがコストが発生するようになっている。また、さらに高いコストを払ってイベントを完全に無効化した上でOCとしてプレイすることもできるようになっている。コストがそれなりに高いので、十分に考慮して実施することになるし、相手にコスト支払い能力がないときを狙ってOC使用して流すというようなこともできる。このシステムは本作が新しいのではないかと思うが、「トワイライトストラグル」より明らかに戦略的になりゲームメカニクスとしては一段階進歩したのではないかという気がする。
その一方で、イベントがどちらに有利なイベントなのかが明示的に識別できないカードデザインになっていてテキストを読まないと判断が難しいのはプレイタイムの面ではマイナスかも知れない。英語がスラスラ読めないと、少々、相手のプレイしたOCカードのイベントをその都度、読む必要があるので少し鬱陶しいかも知れない。

ゲームの評価は対戦してみてから

上述のように「トワイライトストラグル」や他の大統領選挙ゲームと比較して、先達の難点を分析して工夫した形跡を感じられるデザインだと思う。「静的なカードドリブンはいかがなものか?」というスタンスではあったのだが、本作は先ず対戦プレイしてみたいと思う。プレイ時間も短いので、面白ければ幾度かやってみたい気がする。そうするとイベントが見えてきて、強力なイベントを事前に察知したり対策したりという駆け引きも生まれてくるような気がする。