ネタバレ注意

とは言え、ハイペリオンでのアイネイアーの登場から始まって、パールヴァティーでの恫喝、ルネサンスでのゲート突入、ジャングル惑星でのテテュス河の筏くだりの始まり、マーレ・インフィニトゥスの海洋での小危機、氷惑星ドラコニ・セプテムでの友人たち、砂漠のクム・リヤドを経てクライマックスの待つゴッズ・グローブへという長大な冒険を一気に読ませる筆力は凄い。
「啓示空間」や「クリプトノミコン」と比べても読ませる力では圧倒的な開きがあると言って良いと思う。
ただ、一つ惜しむらくは主人公側のアイネイアーエンディミオンの二人に魅力がまったくない。アイネイアーは謎めかしてばかりいる生意気なガキだし、エンディミオンはなんでそんなガキに付き合ってこんな危険で無謀な任務をやっているのか理解できない。
解説にもあるが、その意味で圧倒的に感情移入できるのは追う側のデ・ソヤ神父だろう。不屈の闘志と繊細な注意力と己の信念に照らした正義を持つ人物は、ハイペリオンから始まる三度の失敗にも関わらず任務を与え続けられることに不信を抱きつつも、強い意思で積極的に任務に取り組み続けてマーレ・インフィニトゥスで小さな手掛かりを掴む。抵抗勢力サボタージュに悩まされながらも任務を続け、部下に送り込まれてきたネメスの不審な動きを抜群の注意力で察知し己の正義に照らしてその蛮行を阻んだ。そして最後には己の正義に照らして教会に裁かれる道を選んで去っていく。圧倒的にカッコイイのはこちらだろう。その意味でこの作品のタイトルは「デ・ソヤ」であっても良いくらいではないかと思うし、彼がいなかったら個人的にはこの作品は駄作と結論していたのではないかとさえ思う。
とまぁ、いろいろと書いてきたが、読書時間が楽しかったと言う意味ではこれまでのシリーズ中で最高であり、オールタイムベストに押すには軽い気がするがまた読んでみても良いなと素直に思える作品だと思う。