NATOをソロプレイ

bqsfgame2007-11-04

ブルース・マクスウェルの「NATO」をソロプレイしてみた。
非常に丁寧な仕事を「エア&アーマー」で見せてくれたマクスウェルだが、此処でも仕事振りは同様。デザイナーズノートを見ると、その力作ぶりが窺える。
この作品は、SPIの「ザネクストウォー」や「セントラルフロント」に対するアンチテーゼとしての色彩が感じられる。プレイ時間3〜4時間で終わってしまう手軽な第三次欧州大戦の全貌を俯瞰できるゲームを作ろうと言う意図である。手軽に遊べる代わりに、開戦に至る準備程度の違いによる3つのシナリオを設定し、また核兵器の利用に関するプレイヤーの意図を反映して総論としていろいろなケーススタディをやってもらおうという意思が感じられる。こうしたことは、1回やるだけでライフイベントになってしまうようなSPIの大作では実現できないことだろう。
その一方でデザイナーズノートにも書いてある通りで、3−4時間で遊べる手軽なゲームの中に、現代戦の複雑な諸要素を盛り込むのは難しい。もっとも、このくらいのスケールになってしまうと、戦術的作戦級レベルでの流動性は盤上に反映される必要がなくなり、普通の移動/戦闘システムに航空戦、化学兵器核兵器などの影響を乗せて行けば良くなっている‥という解釈。実際、ゲームはそのように仕上がっていて、ルールも少なめでユニット数も過密でなく本当にプレイしやすい。
今回は一番準備段階の手間もなく登場ユニットも少ない戦略的奇襲シナリオでやってみたのだが、これだと本当にNATOは準備できていないので一気に西ドイツ国境は突破されていく。勝利条件がそれ相応に厳しくなるので終わりまでやればそれなりかも知れないが、最初の2ターンくらいの印象としてはNATOは後退して態勢を整える努力をできるだけするけれどもそれも叶わないという感じ。競技ゲームとしてはいささか問題あるかもしれない。
とは言えデザイナーの意図は、上述したようにこの戦争のあり得る姿をいろいろとケーススタディしてもらうことであって、それほど競技ゲームとしては考えていないのかも知れない。ある意味、これは研究成果であり、教材であるのだと思う。多くのヒストリカルウォーゲームはそうした色彩を持っているが、特に本作ではマクスウェルのデザイン労力の集大成であることが強く感じられるのでそうしたトーンが強い。