国際価格差の縮小と需給ギャップの確保

需給ギャップによる星系ごとの価格動向の違いにより生じる価格差を利用してプレイヤーは安く買って運んで別の場所で高く売るのが基本である。これは別に宇宙でなくても実際経済で起こっていることで、このへんが「スタートレーダー」が経済シミュレーションの基本システムとして優れている点である。ただし、実体経済でも起こっているようにプレイヤーが十分な量の資源を流通させていくと急速に需給ギャップは埋まり価格差が詰まっていく。つまりは儲からなくなってくる。
ただし、鬼才ニック・カープはそんなことはお見通しでいくつかの対策を打っている。まず第一番目がマーケットポジションというルールである。プレイヤーがある市場の資源の取引経験を積んで行くと、需給バランスに影響を与えないで売買できる特別枠が提供されるようになる。その結果として、価格差を詰めないで売買取引をして稼ぐことができるようになっている。これを獲得するためには一定量以上の資源をまとめて売買する必要があるようになっており、大量の取引で価格差が縮まり始めると発動するようになっている。ただし、オリジナルではこのスキルの獲得が若干遅すぎる印象を持っており、少し甘くした方が良いかも知れない。
二番目が工場の設立である。原料を購入することで原料価格の上昇を招いてしまうのだが、そういうことのない自前原料を現地工場で生産して自給することができるようになっている。これにより原料高騰が多少なりとも回避できるようになっている。この工場生産の話しは、本ゲームのリスクフリーレートの基盤となるのではないかと思っているので、また後で議論することになるかと思う。
三番目がイベントによる新規需要の発生である。これは製品価格の降下に対する一時的な調整ということになる。
そして最後の四番目が非合法取引である。合法的に大量に流通して変動性の市場価格を敷いている通常の資源とは別に、オポチュニティチットで取引機会を提供される非合法品は非合法取引のルールに従った時価で裁かれ、通常資源より利益が大きくなるようになっている。
若干このゲームで個人的には嬉しくないのは、こうしたイベント的な取引による利益が通常のメインビジネスより収益に寄与してしまうことだろう。このため、「スタートレーダー」は国際物流ゲームとしての骨太な本線とは別に胡散臭い非合法取引で稼ぐゲームになってしまっている。「ユニヴァース」というRPGのサプリメントとして考えれば非常に適切な素晴らしいデザインだと思う。思うのだが、トレーディングゲームとしての素晴らしい基本メカニクスの魅力がフルに発揮されなくなってしまっているという気もする。もっと普通の交易がメインのバランスの別の「スタートレーダー」があっても良いのではないかと思っている。
そのためにはマーケットポジションの獲得を甘くすることが一つの手段だと思っているが、それだけで十分かどうか今一つ自信がない。これも悩みの一つ。
なんにしても「スタートレーダー」のローカルルール作成は、非常に興味深くチャレンジングな作業なことは確かである。