○燃える平原を読む

bqsfgame2010-02-09

ラテンアメリカ文学シリーズ第三弾。
出版社は、書肆(しょし)風の薔薇。現在の水声社だそうだ。あまり聞かないのだが、ちゃんとサイトも現存している。
アンデスの風叢書シリーズは、1990年から93年に掛けて活発に活動し、2004年のボルヘスのエル・オトロ・エル・ミスモまで13冊が出版されたらしい。13冊という数も、またセレクションも、日本のラテンアメリカ文学シリーズとしては、かなり充実していたのではないかと思う。
本書は、アンデスの風の最初の一冊。
作者のルルフォは大変な寡作で、本書ともう一冊しか著作がなく、作家と呼ぶこと自体が微妙な存在だ。しかし、メキシコの大地に根ざした内容と、本書に収録された短編の極限まで削ぎ落としたようなシャープさでラテンアメリカ文学の重要な先達と位置付けられている。彼のガルシアマルケスが暗唱したとまで言われる彼の短編が、この一冊に凝縮されている。
内容的には荒涼とした大地、殺伐とした生活、そこで起こる呆気ないような暴力。同じようなテイストの短編が最初から最後まで並ぶので、短編集としては単調な印象は否めないだろうか。しかし、その透徹した筆致と、描かれる中米の舞台と生活は、なるほど他の追随を許さないように思う。
もう一冊の長編「ペドロパラモ」は、また違ったテイストがあるらしいので、ラテンアメリカ文学シリーズの主要作家が一回り終ったら読んでみようかと思っている。
此処まで三冊は順調、次はマヌエル=プイグか、バルガス=リョサか、コルタサルか、ビオイ=カサーレスか?