○ねじまき少女を読む

bqsfgame2011-08-29

話題作をすぐに買って、そしてちゃんとすぐに読む。と言う当たり前のことが出来なくなって久しいが、アンランダンに続いて割とちゃんと読むことができた。
ヒューゴー&ネビュラのダブルクラウン。
ジャンルとしては、既に死語に近くなっているサイバーパンクの系列に入るだろうか。下巻の後書きの説明が要を得ているので引用させていただく。
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舞台は近未来のタイの首都バンコク。環境破壊の影響で海面が上昇し、世界各地の沿岸都市は水没している。遺伝子操作の弊害の疫病と農作物の伝染病が蔓延していて、病気に耐性を持つ遺伝子組み換え作物しか栽培できなくなっているため、世界経済はカロリー企業と呼ばれる小数のバイオ企業に支配されている。石油が枯渇してしまっているため、エネルギーはかろうじて超強力な新型ゼンマイによってまかなわれている。そのゼンマイを巻いているのも、象を遺伝子操作することによって作られたメゴドントという生物なので、その飼料の供給と言う形で、エネルギーもまたカロリー企業の支配下にある。タイ王国は、周囲の諸国が崩壊状態であるにもかかわらず、バンコクの周囲に防潮壁をめぐらして水没を逃れ、厳格な検疫と独自の遺伝子操作によって水際で伝染病を食い止めることによって、かろうじて生き延びている。
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凄い設定でしょう。
そして、この設定の下で、様々な陰謀が渦巻き、さらに実行に移され渾沌としたクライマックスを迎えていく。
タイ王国内部での環境省通産省の権力争い。タイ王国の遺伝子バンクを狙う海外カロリー企業の策動。タイ王国では禁止されているねじまきと呼ばれる遺伝子操作人類。
正に原色で塗り分けられたかのような良く言えばヴィヴィッドな、悪く言えば悪趣味な作品世界に、次々に事件が起こっていく。
ダブルクラウンと言うには、いささか格調に欠ける印象があるが、合格点の面白さだと思う。途中で頓挫してしまった2年前のダブルクラウンのユダヤ警官同盟の轍を踏まなくてありがたかった‥(^_^;