デシジョン:イラクをソロプレイする

茨城会での対戦予定が立ったので、ルールを読んでソロプレイしてみました。
ルールを読んだ印象は、「ソマリアの海賊」に近いと感じました。ネットウォーポイントを軸に、地域支配と戦闘成果で獲得し、それを使って部隊を動員し、最終的には勝利判定します。
ただ、実際にプレイすると、随分と印象が違っていました。
ソマリアの海賊では、そもそも海戦であること、また多国籍軍側の主力である米海軍、米空軍の機動力が突出、他方で海賊側の組織が弱体であることから戦線的な構造は成立しませんでした。
それに対して、本作では浸透能力のある部隊はいるものの、基本的には各地域のオープンボックスに部隊を配置すれば敵を止められるので戦線構造が成立します。多国籍軍の空中機動部隊や、SOF(スペシャルオペレーションフォース)は止められませんが、こうした高価な部隊を単独で突出させて反撃を食うと不経済なので、それほど浸透部隊が自分勝手に神出鬼没だったりしません。「ソマリア」での米空軍の空襲に比べれば、ごく大人しいものです。
なので、意外に普通の作戦級に近いテイストになっており、これならWW2の作戦級ゲーマーでも違和感なくプレイできるかも‥。いや、やっぱり斬新過ぎて、ちょっと無理でしょうか。ヴェトナム戦争の作戦級からなら、割と近しいのではないかと思います。
consimで出た重要な変更点として、得点が2倍になる効果が多々あるのですが、2倍が重複した場合は3倍となり、それ以上に重複しても3倍より増えなくなりました。これは、割と大きい変更です。クロノ公開の和訳にはエラータとして末尾に付記されています。
ソロプレイした感想として、作戦立案上、以下の点を良く理解しておく必要があります。
ア)3種類の戦闘結果表の特性の違い
イ)1ターンで被る戦闘結果による敵からのNWポイント削減の規模
ウ)非通常部隊の利点と、その利点を無効化して攻撃する方法、攻撃されるリスクへの対処方法
戦闘結果表が3種類もあると言うのは、本作を紹介した各所の書込みで既に説明されている部分です。
大雑把な使い分けとしては、市民活動表はNWポイントを獲得しやすく、敵を消耗させやすい。ゲリラ戦闘表は自軍部隊の練度を上げやすいが、世間の反発を買うのでNWポイントを相手に与えやすい。キネティック戦闘結果表は、基本的に戦場展開(オープンボックス)した通常部隊同士で使用するもので、相手を撃破してNWポイントを獲得すると言う直接的で最大の効果を持つが、時として「やりすぎ」に対する反発から相手に大きなNWポイントを与えるリスクがある。
と言う所でしょうか。
ゲームの全体構想として、敵部隊を殲滅して相手の行動力を削ぐことで勝ちに行くのか、敵のNWポイントをゼロにして勝ちに行くのかと言う指針を決める必要があります。それを踏まえた上で、個別の戦闘状況を睨んでどのCRTを使うのかを決めることになります。一長一短ですし、いろいろなCRTを使うと、結局、上述の全体構想のどっちつかずになりやすいのが悩ましい所です。
あと、このゲームは戦闘結果の基準が2種類混在していて、これが初見者の理解しにくさに輪を掛けています。在来型の通常戦闘であるキネティック戦闘結果表では敵ユニットの50%を撃破、もしくは100%を撃破と言うわかりやすい結果になっています。対して、他の2つのCRTでは、ユニットのレベルアップやレベルダウンで記載されています。通常型ユニットはレベル1で動員されますが、戦闘結果によってレベルアップしていき、基本的に2なら2倍、3なら3倍の戦闘力を持つようになります。逆にレベルダウンして0になると消滅します。
この時に厄介なのが、非通常型のユニットはレベルの概念がなく、レベルアップダウンの影響を受けないことです。ですから、非通常型のユニットを除去するには、キネティック戦闘を仕掛けるしかありません。ところが、インフラボックスに潜伏した非通常型ユニットに対しては、原則としてキネティック戦闘は仕掛けられません。この時に訳に立つのがIRSチットで、これを使えば攻撃できるようになります。
ミランダのゲームでお馴染みのチットは今回も健在です。前述のIRSチットに加えて、獲得するNWポイントを倍化する情報戦争チット、戦力を倍化する戦術チット、部隊のレベルアップを促進するリーダーチット、敵のチットを無効化するブラックオペレーションチットなどがあります。種類的には少なく、枚数もアメリカ革命から比べると少ないのですが、1ターンに実施される戦闘が少ないので威力は十分にあります。また、プレイヤー別のプールになっていて総枚数が少ないので、引き切ってしまえば何のチットを何枚引けるか目算が立つのはミランダゲームでは珍しいことです。このことを利用したチット戦術と言うのもあるので、ここらへんは普通の作戦級ゲームとは別のセンスを要求されます。
2番目の点については、サドンデス負けしないために把握しておく必要があります。このゲームではソマリア同様に、NWポイントがゼロになるとサドンデス負けになります。1ターンに失う最大リスクは、自軍の保有する高価なエリアの得点に3倍(前述のルール変更により3倍が最大になったため)を掛けておけば一つの目安になります。ただ、大変困ったことに高価なエリアには複数のインフラボックスがあり、オープンボックスも併せて何度も戦闘が起こる可能性があり、その回数だけ失点が嵩みます。ですから、高得点エリアを支配(つまりインフラボックスを全部支配)していれば、定期収入がある一方で、サドンデス負けを食うリスクが高まる構造になっています。とは言っても、それにビビッて高収入エリアを手放すのも非現実的です。さらに、エリアの支配を失うと民兵の維持に支障を来す損耗ルールもあります。
非通常部隊の特性については、それだけで1エントリーを取って議論する必要があるのではないかと思います。コストが高く、浸透能力を有し、インフラボックスでの潜伏能力を持っています。潜伏できると言っても、IRSチットで強行攻撃されるリスクがあり、それを避けるためのキャンセル用チットを握っているかどうかで撃たれ強さが変わってきます。能力が高いので、攻撃に使っても防御に使っても非常に役に立ちますが、両方に使えるほどの数は揃いません。この使い方、相手の非通常部隊への対処の仕方がゲームの肝になっているように思います。ここの部分が、非正規ゲリラ戦ゲームらしさの一番強い部分でもあります。
全体として、本作は面白く出来ていると思います。プレイバランスや作戦の立てにくさから見て、前作の「ソマリアの海賊」の方が人には薦めにくいと思いました。「イラクの決断」があれば、「ソマリアの海賊」をプレイする機会はなくなるかも知れません。
そういう意味では先日のミランダのゲーム打線も、入れ替える必要がありそうです。
同じシステムでダブルマップの「ホーリー・ランド」もやってみたい気がしてきましたが、マップの広さに加えて、どうやら大量のカウンターエラーがあると言う情報が入ってきて意気を挫かれている所です‥(^_^;