○SF宝石を読む

bqsfgame2015-10-25

SF宝石と聞くと懐かしい世代。
独特の翻訳SF中心の構成、その月に出たSF全てを網羅したブックレビュー。前代未聞の担当者不在による休刊。
なにもかもみな懐かしい。
その名前を取っているが、オール日本人作家の読み切りと言うことで、全然別物になっている。
内容的には現在の日本SF界の状況を反映していて、境界領域の作家の作品が非常に多い。ホラー色の強い作品が多いのも一つの傾向。
この内容だと次の号を買うことはないと思う。
それでも、これは収穫だと思ったのは、上田早百合の「上海フランス租界チジロ320号」。
筆者は、「南京路に花吹雪」のファンだったので、租界物には無条件に弱い。それとは別に、時代感も良く出ている時間改変もので、非常に上手くまとまっていると思う。さすがの出来栄え。
次に良かったのは、天下の東野圭吾の「レンタルベビー」と、福田和代の「レテの水」だろうか。レンタルベビーは本当にそういう話しなのだが、貸してくれるのはロボットのベビー。レテは、飲むと記憶を失うという伝説の水の河だそうだが、犯罪者に偽の記憶を刷り込んで生産性の高い市民として使うという設定。その設定がどこから綻びて事態が発覚するかが腕の見せ所。