☆無限の書を読む

bqsfgame2018-06-01

創元叢書です。
ウィロー・ウィルソンという新人。
これは久しぶりのスマッシュヒットでした。
出先で読むものが切れたので書店に入り、ほとんど信用していない「SFが読みたい」を頼りに買ってみました。いや、これは恐れ入りました。
サイバーパンクアラビアンナイトを足して、二で割らないままの濃い作品です。千夜一夜物語と対になる幻の千一日物語が実在します。それは、人間ではなくジンが記載したもので、その内容には最先端のプログラムに利用できる着想が満載。
主人公は場末のプログラムマスターで、王族の婚約者と関係を持ち、別れ話で本書を渡されました。しかし、その王族が国営対ハッキング部隊の切れ者で、その男にサイバー空間でもリアル空間でも執拗に追い回されます。
逃げる過程で主人公と幼馴染の女性は、本物のジンと遭遇することになります。一方、相手方も既に魔界のものを手先として利用しており、俄然、妖奇な展開に。
最後はノンストップアクションの様相を呈しますが、大混乱の内に革命が起きて、敵方は血祭りに上がり主人公と幼馴染は無事にエンディングを迎えます。
痛快無比と言うと、少し違う感じですが、独創的なイスラムテイストのサイバーパンクでお勧めです。「重力が衰えるとき」よりも、間違いなくワンランク上です。まぁ、あれはハードボイルドであって、サイバーパンクではないですか。
もっと直近の例と比較するなら、「アルテミス」より上と思います。かなり褒めています。