○カモフラージュを読む

松井玲奈デビュー短編集。

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結構、売れているようで書店で平積みになっていたりします。

「食」に関わる6短編をまとめたもので、「すばる」掲載が3本、残りは書き下ろしです。

かなり良く書けています。

元アイドルというのは仮の姿、実はかなりの愛書家なので、インプットが活字でアウトプットが活字という印象を受けました。

巻末に「拭っても拭っても」が置かれていますが、これが集中の目玉。

全体に、フェティシズム色が強い気がします。「完熟」は、桃をまるかじりにする女性フェチの男性と、その妻となった人の二重視点作品。

巻頭の「ハンドメイド」は妻子ある男性との夕刻のホテルでの食事のために手作り弁当を作る女性の話し。元アイドルが不倫をする女性の話しを書くのは、かなり思い切った感じです。そういう意味では、アイドルという姿も松井玲奈のカモフラージュだったのかと思います。

田舎から出てきて念願のメイド喫茶に就職したものの、食欲を自制できなくて太っていく主人公を描いた「いとうちゃん」も、かなり意表を突いた題材です。

作品集全体として、同じカラーの作品がまとめられているのは、高く評価できます。でも、もっと他にも抽斗がありそうで、これからが楽しみです。