1:対仏同盟としてナポレオン戦争をプレイする
この切口はどうかと思いましたが、意外なほど面白く仕上がっています。実際に2度ほどチャレンジした感想として、ナポレオンのフランス軍はなんと凶悪なのだろうと思うようになります。「コルシカの悪魔」とは言い得て妙です。
対仏同盟は寄せ集めな上に、プロイセンやオーストリアは何度もナポレオンに屈服して脱落しては再起します。そこらへんをイギリス視点にして整理したセンスはなかなかです。また、イギリスの思惑通りには動かないロシアの参戦や、親仏に寝返ってしまうスペインの扱いも良い感じです。
2:コルシカの悪魔おそるべし
フランス軍はもっぱら大陸軍フェイズに活動します。と言っても、フランス軍を意思をもって遠征するようにロボット化するのは難しいので、ここに工夫があります。
フランス軍ユニットの配置は毎ターン洗い替えになっています。
大陸軍フェイズに、フランス軍は、フランスに4ユニット配置。次にナポレオンのその年度の主要関心国に4ユニット配置。この主要関心国はターントラックに指定されています。第1ターンはフランスになっていて外征しません。第3-4ターンはイタリアになっていて、対仏同盟の主要国を直接攻撃してきません。対仏同盟側の態勢を整える余裕が与えられています。しかし、その後はオーストリアやドイツを直撃してきます。
これだけだとフランスの行動は丸判りで妙味がありません。そこで、フランスの次に対仏同盟側が配置し、その後にナポレオン本隊がランダムな国に本人の指揮で切り込んできます。このナポレオン本隊がどこに来るかが大問題。対仏同盟側が配置して、この国は確保したと思った所に突然殴り込まれて、さらにオーストリアやプロイセンを降伏させられたりすると、唖然としてしまいます。しかし、この唖然とさせられる感じが、当時の欧州君主国の実感なのだろうなと思います。
3:多彩なイベント
史実で実際に発生した多彩なイベントが2種類の方法でゲームに織り込まれています。
1つは、ターントラックに指定されている歴史的事件です。
もう1つはランダムドローするチットによるランダムイベントです。ただ、ランダムイベントと言っても時期に関係なくなんでも起きるようでは困るので、チットカップに入れる時期が規定されており歴史的事件の発生により投入するものが多くなっています。
これによって、ある事件が別の事件の誘因となっている因果関係を辿れるようになっています。また、プレイヤーが全てのイベントを全能の予言者のように知ってしまうことを防止しています。
この部分が非常に良くできていて、ゲームに物語性と、ソロプレイであるにも関わらず戦略思考の必要性を与えています。
とかくソロプレイゲームは、「作業の繰り返し」や、「複雑な運試し」になりがちですが、本作はそうなっていません。
作業の繰り返しと言う部分は否定しきれないのですが、その作業が生む物語や、意思決定場面の魅力によってプレイするのが楽しいゲームになっています。