12月のNHK杯囲碁トーナメント

 12月第1週については前回書いた通りです。

 第2週は、山下対富士田戦です。今年だけで5回目の対戦だそうです。左下で白の星に対して山下九段が6の6に打った時に漢傑八段と星合さんが「おおーっ!」と声を挙げました。
 左下は両者ともに生きられない状態になり、最終的には白が黒を取りましたが、黒からコウに仕掛ける手が残って、これが出入り50目かという絶対の劫立てとして黒の財産として残りました。
 険しい戦いはさらに左上に。此処でも白が追い落としで生きました。にも関わらず、AIの形成判断はずっと黒優勢。山下九段も優勢を意識したかのような着手でした。
 左辺の打ち込みから事態は三度急迫して下辺で戦いとなりコウに、ここで黒の絶対の劫材が投入されましたが、さすがに50目では白は受けて白が左下を打ち抜きました。しかし、下辺から中央の競り合いで黒が優勢となり白の富士田が投了して終りました。
 難解な接触戦が続く碁でしたが、漢傑八段が上手く解説してくれて楽しく見られました。

 第3週は、まだ若手と言える芝野名人に、もっと若い混沌流の酒井四段が挑戦。酒井四段が無理気味に仕掛けるも名人はゆるまず力まず応じて白の酒井の薄みをついて酒井の大石を仕留めます。しかし、酒井は左上全体を地にする大構想で最後まで勝負を挑みましたが、名人は冷静に踏み込んで捌き酒井の投了図となりました。
 解説は、名人が入ってきたころに9子置かせて打ったことがあるという平田八段で前週の漢傑八段に続いてわかりやすく解説してくれました。

 第4週は、お久しぶりの小松九段の解説です。「NHK杯に呼ばれるのが一流棋士ですが、わたしは最近はもう呼ばれませんから」と愚痴ったのが2017年。その後、登場頻度がさらに下がりましたが、昨年度に続いて二年連続の登場です。
 第一人者の一力棋聖に若手エースの福岡四段が挑戦する碁でしたが、全般的に福岡四段の気負い過ぎが感じられ一力棋聖の圧勝となりました。解説は安定していて聞きやすかったです。と言うか、筆者が昔勉強していた頃の定石や布石相場で語っていただけるので飲み込みやすいのです。

 12月の解説陣は三回戦に入ったためか、非常に良い解説者が並びました。孫、漢傑、平田の三人は、首藤八段を加えれば八段解説者四天王と言って良いメンバーです。これにベテランの小松九段を加えて、全回安心して見られました。

 先を見ると、個人的に評価の高い片岡先生、人気の高い武宮先生が登場、さらに鈴木伸二八段が負けたので登場します。ここに八段解説者の五人目がいましたね。