「NSA」のエシュバッハです。
ハヤカワ文庫NVなので死角に入っていました。
エルサレムの遺跡発掘現場で、2000年前の地層からソニーのヴィデオカメラのマニュアルが発見されて始まります。しかも、当該カメラについてソニーに問い合わせると、当該機種は開発中で未発売だと言うのです。
近未来に発売される最高性能のヴィデオカメラを持ったタイムトラヴェラーは何をしに2000年前のエルサレムに行ったのか?
彼はイエスをヴィデオに納め、理由は判りませんが片道旅行しかできないタイムトラヴェルの欠点から、2000年後に発掘されるであろうエルサレムの遺跡に隠したのではないかと推定して調査隊は色めき立ちます。だとすれば、マニュアルだけでなく、イエスの映像を収めたカメラがどこかに隠してあるはず‥。
というお話しです。
ムアコックの「この人を見よ」を彷彿とさせられ、筆者はてっきり発見した学生が自ら片道時間旅行に出て姿を消すのかとドキドキしながら読みました。
残念ながら推測は外れており、もっと下世話な争いに巻き込まれていきます。
NSAほどの快心作ではありませんが、これもなかなか面白くできています。お薦めできる一作と思います。
エシュバッハの他の作品も是非とも訳して欲しいものです。訳者解説にある「ソーラーステーション」が特に良さそうです。
p62
「彼は書いている、カメラを二段目の石のなかに隠したと」エホシュアは言った。「あそこのだれかが接吻している石だ」
「ちがう。あれは二段目じゃない」その口調は吉報を期待させるものではなかった。「本来の神殿の壁はもっとずっと高かった。ここでわれわれが見ているのはその上部にすぎない。十一段が見えていて、残りの十九段は地面の下にあるんだ」
p339
あなたはくりかえし、くりかえし、あらゆる可能性を検討した。どんなにとっぴな考えでも。不可能を不可能と決めつけないシャーロック・ホームズの最良の伝統にのっとって。
訳者解説より
②ソーラーステーション(1996)
2015年、太陽エネルギーを収集して地球に転送していた日本の宇宙ステーション「NIPPON」で殺人事件が発生し、それはきわめて危険な陰謀の序曲となった‥