セイレーンの懺悔を見る

終りまで見ました。

「サギデカ」もヘヴィー級でしたが、これもヘヴィー級でした。

メディアの在り方について考えさせる作品なのですが、ミステリーとしても四重構造になっていました。

最初は捜査かく乱を目論んだ誘拐事件。

実は未成年同士のいじめのエスカレートによる殺人。

と思わせたら、その容疑者と全く別の犯人が逮捕され、SNS上のトラブルが原因とされます。

ところが、犯人たちの誰も首を絞めていないというのに死因は絞殺。実は犯人たちの暴行事件の後に、真犯人がいたことが判ります。

被害者は真犯人に助けを求めたのですが、その前に別の人物に助けを求めて二十回以上も電話していたことが判ります。しかし、その人物は一度も電話に出ることはありませんでした。

日本の法律では真犯人までしか裁けないのですが、助けを求める電話を見捨てた人物について報道することを主人公(新木優子)は選びます。

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新木優子は、今までと路線の違う役に取り組んで幅を広げて見せたかと思います。ただ、煮詰まった表情をすると鼻の穴が目立つのが気になりました(笑)

真価を問われるのは次にどんな役のオファーが来るかを見ることになるでしょう。

英文レビュー:N:ナポレオン戦争

Very soon after purchase ( of Japanese version ), I’ve tried to play this game.

 As my first impression after reading the rule, it looks more cumbersome then usual solo-play games.  The sequence is really lengthy.  And it is not easy to imagine how all the pieces could work as an entity.  So, I was a little bit afraid of playing.

 But, once I’ve finished my first and second trial, I’ve totally changed my evaluation.

 It doesn’t mean the sequence is short.  But, with carefully reading the playaid, it is not hard to play the whole sequence even on my first trial.

 And, as an entity, you will taste the all pain of coalition to stand against the Corsican Devil.

As the designer described in his note, this game is really narrative and tell the story of Napoleonic War from the viewpoint of England.  I think this point should not be underestimated.

 

1: playing coalition side on Napoleonic War

Honestly speaking, I wondered this viewpoint when I first heard.  But, it is very successful as an entertainment.  Once you play this game few times, you will think the Napoleon as a real devil.  He is really berserk.

Coalition was a real mosaic.  Preussen and Austria had been beaten more than once by Napoleon.  I think it is a good idea to set the viewpoint on England.  From this viewpoint, Russia and Spain are somewhat out of control by player.  I think this is historical and even gives some excitement to the play.

 

2: Corsican Devil is really powerful and quick

French armee in the game mainly works during grand armee phase.  Actually it is very hard to make non-player army to “work” smoothly.  So, the designer made a smart solution.

Every turn, all French units are reset and set up again next turn.  First, 4 units are set up in France.  Then, 4 units are set up in BUT country.  BUT country is the country which Napoleon has main intention in that turn.  This is defined on turn record track.  On the first turn, this is France.  And on the 3 and 4 turns, this is Italy.  These are historical and give the player time to prepare the threat of Napoleon.  Later, this will come on Preussen and Austria directly.

With rules above only, player can predict the whole move of French army.  So, after coalition force’s setup, Napoleon’s main force will strike a country by random determination.  This is a real problem for the player.  By setting up his force, he plan to control some important country ( usually Preussen and/or Austria ).  But this plan was totally broken by Corsican Devil.  Yes, this is a nightmare.  But, I think this nightmare might be the real nightmare that Coalition had felt in those days.

 

3: colorful events

There are plenty of historical events during Napoleonic War.

Those are included in the game by 2 methods.

The first is historical events defined on turn track, so they happen determined turn.

The other is random event happened by random chits drawing.  But, these chits are somewhat controlled by the rule and play.  Some historical events required to put some random event chits in the cup.  So, this can describe that some event cause other event as a result.  And player can some estimation what will happen near future.

And this system gives the game a storyline, and it also gives an excitement to the play.

 

In my opinion, solo play games tend to be a repetitive paperwork and/or complex lottery.

Though this cannot avoid a repetitive work totally, those works can tell a story.

And it can give a situation that player need to decide.

So, this is a really interesting solo-play game.

N:ナポレオン戦争をソロプレイする2

1:対仏同盟としてナポレオン戦争をプレイする

この切口はどうかと思いましたが、意外なほど面白く仕上がっています。実際に2度ほどチャレンジした感想として、ナポレオンのフランス軍はなんと凶悪なのだろうと思うようになります。「コルシカの悪魔」とは言い得て妙です。

対仏同盟は寄せ集めな上に、プロイセンオーストリアは何度もナポレオンに屈服して脱落しては再起します。そこらへんをイギリス視点にして整理したセンスはなかなかです。また、イギリスの思惑通りには動かないロシアの参戦や、親仏に寝返ってしまうスペインの扱いも良い感じです。

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2:コルシカの悪魔おそるべし

フランス軍はもっぱら大陸軍フェイズに活動します。と言っても、フランス軍を意思をもって遠征するようにロボット化するのは難しいので、ここに工夫があります。

フランス軍ユニットの配置は毎ターン洗い替えになっています。

大陸軍フェイズに、フランス軍は、フランスに4ユニット配置。次にナポレオンのその年度の主要関心国に4ユニット配置。この主要関心国はターントラックに指定されています。第1ターンはフランスになっていて外征しません。第3-4ターンはイタリアになっていて、対仏同盟の主要国を直接攻撃してきません。対仏同盟側の態勢を整える余裕が与えられています。しかし、その後はオーストリアやドイツを直撃してきます。

これだけだとフランスの行動は丸判りで妙味がありません。そこで、フランスの次に対仏同盟側が配置し、その後にナポレオン本隊がランダムな国に本人の指揮で切り込んできます。このナポレオン本隊がどこに来るかが大問題。対仏同盟側が配置して、この国は確保したと思った所に突然殴り込まれて、さらにオーストリアプロイセンを降伏させられたりすると、唖然としてしまいます。しかし、この唖然とさせられる感じが、当時の欧州君主国の実感なのだろうなと思います。

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3:多彩なイベント

史実で実際に発生した多彩なイベントが2種類の方法でゲームに織り込まれています。

1つは、ターントラックに指定されている歴史的事件です。

もう1つはランダムドローするチットによるランダムイベントです。ただ、ランダムイベントと言っても時期に関係なくなんでも起きるようでは困るので、チットカップに入れる時期が規定されており歴史的事件の発生により投入するものが多くなっています。

これによって、ある事件が別の事件の誘因となっている因果関係を辿れるようになっています。また、プレイヤーが全てのイベントを全能の予言者のように知ってしまうことを防止しています。

この部分が非常に良くできていて、ゲームに物語性と、ソロプレイであるにも関わらず戦略思考の必要性を与えています。

とかくソロプレイゲームは、「作業の繰り返し」や、「複雑な運試し」になりがちですが、本作はそうなっていません。

作業の繰り返しと言う部分は否定しきれないのですが、その作業が生む物語や、意思決定場面の魅力によってプレイするのが楽しいゲームになっています。

N:ナポレオン戦争をソロプレイする

早速ですがソロプレイしてみました。

コロナ禍でテレワークが増えて、ユニットを切る時間を確保しやすくなったこともあり、最近は入手したものは比較的タイミング良く消化しています。もっぱらソロプレイばかりなのは止むを得ませんが。

ルールを読んだ感想としては、ソロプレイゲームとしては煩雑な部類に入ると思いました。とにかく手順が長いのです。そして、それぞれの手順が全体像として、どういう風に組み上がるのかが想像しにくい。これは、ちょっと危ないかなと思いました。

しかし、実際にソロプレイしてみると、評価は一変しました。

確かに1ターンの手順は長いのですが、プレイエイドを見ながらプレイして行くと、大きな支障なく一回目からプレイできました。

また、全体像として対仏大同盟として、凶悪な(敢えてこう表現しておきます)ナポレオンと立ち向かう苦悩を存分に味わうことができます。

デザイナー本人が言っている通り、ナレーティブな作りになっており物語性を感じられます。これは非常に高く評価すべき点と思いました。物語性を生みだしたいと思っているデザイナーは少なくないと思いますが、実際の作品でそれに成功しているデザイナーは稀少だと思います。

書きたいことがいろいろとあるゲームなので、明日に続く。

影踏みを見る

WOWOWです。

クライマーズハイ」が良かったので予定外で録画視聴。

うーん、陰鬱なお話しでした。再見することはないでしょう。

空き巣を生業として服役を終えて出てきた主人公が山崎まさよし

その若い頃と、彼と瓜二つの双生児の二役を北村匠海

山崎が空き巣先で出会った夫を殺して自分も一緒に焼身自殺しようとしていた女に中村ゆり。いかにも彼女らしい役ですが、彼女としては大きな役で出ています。

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主人公の幼馴染で服役期間中待っていた恋人を尾野真千子

尾野真千子に求婚して断られストーカー化する滝藤賢一。実は彼も双生児で二役。

尾野真千子は意外にも保母さんの役。ちょっと彼女の路線では珍しい。

その同僚で登場する高田里穂がちょっとカワイイ。

調べてみたら、彼女は新版「東京ラブストーリー」の長崎役を演じたのですね。長崎役では線の細いメガネ美人。 

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瓜二つの双生児の業を二組の双生児を通して描く暗い話です。

主人公の母は、盗癖のある弟を無理心中していて、この母親が大竹しのぶ。「後妻業」もそうでしたが、近年、こういう悪い役が似合うオバサンになりましたね。

クライマーズハイを見る

WOWOWです。

家内の強い主張で録画視聴。

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御巣鷹山事故を報道する北関東新聞の物語。

全権を任される燻っている記者に堤真一

原因である隔壁破壊のスクープを追う工学部出身の女性記者に尾野真千子

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事故当日の悲惨な現場に入って必死に雑感を纏めながらも降版に間に合わず飛ばされてしまうキャップに堺雅人。一緒に現場に入って精神を失調するカメラマンに滝藤賢一

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連合赤軍事件報道を今でも背負っている古い記者に遠藤憲一、蛍雪次郎。

報道と激突する販売局長に皆川猿時

ラスボス的な社長に山崎努

キャスティングが非常に良く、どのキャラクターも味わい深いものがあります。

○牙の時代を読む

小松左京短編の中村セレクション。

今回のお題は、「毒蛇」です。

同作品が収録された角川文庫「牙の時代」を全部読みました。

いわゆる「エロ・グロ・ナンセンス」系列の作品を纏めたものになっていて、読後感は良くありません。

日本の第一世代SF作家は、平井和正を例外として、あまりそうした系列の作品は書きませんでした。星新一の星の数ほどあるショートショートには濡れ場が一つもないとも言われています。

ただ、書かないと言うのと、書けないというのは別の話しで、書けるんだよというエビデンスとして小松先生は時折そういう作品も書いていました。

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さて、「毒蛇」は、核戦争後の世界で、自動給餌される食料と人口とがアンバランスになったため、人口調整する方法として大人の男性(アダルト)になる資格を得るには、自分の父親を抹殺しなければならなくなった社会を描きます。

背後には、どうして哺乳類と鳥類には、毒を持った生物種が少ないのかと言う生物学の疑問があります。そうした環境に置かれれば、哺乳類(人類)も毒を持った存在に進化していくのではないかと言うメッセージです。

そうした生物学的なテーマが見えても、あまり毒消しにはなっておらず、かなり読後感の悪い殺伐とした作品です。

表題作の「牙の時代」は、あちらこちらで巨大化&凶暴化した生物が発見される話しです。

背後には、種としての個体密度が高くなると「軍隊イナゴ」モードの個体を発生して、まるで別種のように凶暴化して最後は自滅の道を辿るイナゴのようなことが他の生物種でも起こるのではという着想があります。

こうした学術知識に基づいた出発点から「エロ・グロ・ナンセンス」を書いて見せる所が小松先生の一筋縄でいかない所です。こういうものを書けませんかと打診した編集者に対する、「書いて見せようじゃないか、でもちゃんとした本格SFとしてだよ」と笑っている姿が目に映るようです。