個人的小松作品のベスト:ゴルディアスの結び目

bqsfgame2006-07-19

小松左京先生の作品の中で個人的なベストを挙げるとした迷わず連作短編形式の長編「ゴルディアスの結び目」を挙げる。次点は「果てしなき流れの果てに」だろうか。
山田正紀の神シリーズにも通じる「想像できないものを想像する」ような思考実験、人間の通常の思考範囲を超えたところへと展開する物語が素晴らしいと思う。水見陵の「マインドイーター」などと並んで日本SFのコンピティティブ・エッジと呼んでも良い一群の作品だと思う。
映画化された「日本沈没」、「復活の日」、「さよならジュピター」などは、上記の作品と比べると人間の通常のドラマの範囲に納まっていて起こることは確かに大スケールだが人間ドラマの迫力として海外の同種の作品などと比べてとりわけ迫力があるとまでは言えず世界に出して読んで欲しいとまではいかない気がする。
それよりはむしろ昨日も書いた小松作品の源流とも言うべき「日本アパッチ族」や「明日泥棒」のようなコミカルな、それでいて辛辣なメッセージを含んでいる作品の方が独創性が高く紹介するに値する気がする。
なにより小松左京先生が凄いのは、これらに加えてかつてNHKで人形劇になった「空中都市008」のようなジュブナイルから幾多の短編まで一人の作家として広いレンジを書きこなしており、日本SF界の領域を一気に拡大したと言う点ではないかと愚考する。その意味では今回の機会に小松作品が再評価され、再読されることを期待する。
取り合えず自分でも「ゴルディアスの結び目」を読んでみようか‥。