☆日本沈没第2部を読む

bqsfgame2013-11-07

言わずと知れた日本沈没の続編。
チーム日本沈没第2部の作品と言って良いと思うが、構想は小松左京、執筆は谷甲州
読んだ感じとしては、リーダビリティや人物造形などは明らかに甲州作品。しかし、日本が沈んだ後の世界を作り上げる構想力は紛れもなく小松作品。
小松左京は風貌や、日本SF界での存在感から、豪放磊落な印象を受ける。しかし、実際には非常に繊細で緻密な作家なのだと思う。そういう意味では、日本沈没では大胆に日本を沈めたと言うよりは、万難を排して沈めたと思う。とかくSFでは、ものの数行で惑星を一個吹き飛ばしてしまうような作家もいる訳だが、小松は日本列島を沈めるのに大変な準備をして大変な紙数を掛けて沈めている。その裏には竹内先生らに取材して、日本は沈められると本人が心底納得して沈めていると言う迫力があった。
その意味で、本書でも地球規模の変動はさらに進むのだが、その裏付けには万難を排しているように思える。また、それと戦うための地球シミュレーターの技術についても、それを巡る国際社会の駆け引きにも念入りなディスカッションがされたと窺える。
リーダビリティが高いので上下で700ページを越える分量もアッと言う間に読み終わってしまって、物足りないくらいである。なるほど、これでは第三部をと言う話しが、制作サイドからも読者サイドからも浮上してくるのは無理もない所だろう。ただ、小松左京と言う生みの親を失った日本沈没と言う物語が、さらに前へ進むべきかどうかはなかなか難しい所だろう。
ちなみに本書は2007年の星雲賞を受賞した。第一部に続いての受賞である。日本のSFファンにいかに支持されたかの指標であり、単に有名な作品の続編と言うのでなく内容的に優れていたからだと確信できる。