☆マインド・イーター完全版を読む

bqsfgame2012-02-07

日本SFの三大傑作連作短編集の一つが完全版で復刊した!
素晴らしい!!!
ちなみに、後の二つはプリズムとゴルディアスの結び目である。
水見稜は、本作品集と、夢魔の降る夜が全てだったと言っても良いほど寡作であり、また後年の作品は不発だった作家である。しかし、ハヤカワSFコンテストで登場し、上述の2作品を提示した時には日本SFの柱となるのではないかと期待させた大器でもあった。
マインド・イーターは、宇宙空間に救う生命に対する悪意を持つ岩石のような存在である。その正体については、作品集の中で、ある時はビッグクランチの失敗によるとされ、ある時には人類が生み出したとされ、ある時は究極言語との関係が議論されたりする。
しかし、結局のところ、明解な答えが出される訳ではなく、様々な設定で、いずれも非常にシャープな踏み込んだSF的な物語が展開され、いずれも重量級の読後感を残す作品ばかりが集まっている。
そもそも本連作が掲載されている頃はSFマガジンを定期的に読んでいた頃で、いずれも雑誌で読み、旧版に収録されているものは旧版で読み、今回が3度目と言う作品がほとんどである。
しかし、3読になっても、その衝撃は衰えることはなく、発表から30年を経た野性の夢が今も全く古びていないのには畏れさえ抱く。
帯の「日本SFが成し遂げた最高の達成」は、客寄せの惹句ではなく真実である。
まだ読んだことのない貴方、悪いことは言わないからすぐに買って読みなさい。読まずに置いておくと、いつか読んでから後悔することになるのは疑いない。