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bqsfgame2006-11-05

機械主義者対工作者の未来を描いたスターリングのシリーズの長編。
500ページの長さは当時としては大作。
率直に言って、それほど面白いとは思わなかった。短編集「蝉の女王」の方がずっと良かったという気がする。
太陽系の連鎖国家の時代、機械主義者の支配階級に対して工作者たちは若いエネルギーを持つ反乱者という位置付け。その時代から話しは始まり、主人公リンジーは、クーデターを目論むが失敗して長い長い遍歴を開始する。クーデターの同志であったコンスタンティンとは、互いに異なる道を歩み、宿敵であると同時にもっとも理解しあった旧友として立場を変えて幾度も巡り合うことになる。エイリアンである「投資者」の時代などを経て、最後は深海生物にヒントを得て木星の熱エネルギーの周りに生存圏を求める結末へと雪崩れ込んでいく。
人間の末裔が、人間とは似ても似つかないものに変容しつつ、争いながら行き続けていく様は斬新でなまめかしく、いま読んでも前衛的な部分を持っている。その意味では、ウィリアム・ギブスンの電脳空間が一般化して陳腐化したのに対して、スターリングの宇宙SFは輝きを失っていない。
しかし、小説としては読みやすくなく、SFヴィジョンとしても本作はわかりにくい気がする。オムニバス短編集の形にしたり、あるいは一つ一つの時代がそれだけで一冊の長編になり得るほどのガジェットを含んでいるので連作長編にしてもらっても良かったかも知れない。贅沢な不満かも知れないが、詰め込み過ぎのような気がする。
もっとも最近のSF/ファンタジーは、書き伸ばしすぎのものが多いのだが‥(^_^;