☆SFマガジン700海外編を読む

bqsfgame2014-11-16

SFマガジン700号記念アンソロジーの海外編です。
珍しく出張先で読む物を切らして購入し、すぐに読みました。
冒頭はクラークとシェクリイです。SFマガジン黎明期からのセレクション。
思うのですが、今読んでも意外に古く感じません。クラークは、遭難したエネルギー生命体の最後を描く小編。バクスター辺りにもありそうな話しですね‥(^o^)
シェクリイは、最近のテレビ番組の「逃走中」に近いアイデア。ただし、本当に命懸けだし、視聴者参加です‥(^o^) シェクリイらしいアイデアですが、時代が彼に追いついてきた印象を受けます‥(^o^)
ニーヴンの「ホールマン」は、微小ブラックホールを使った殺人事件というハードSFミステリーです。ニーヴンは当たり外れがあると思いますが、これは会心作の部類です‥(^o^)
スターリングの「江戸の花」は、テッド・チャンと共に集中のベストです。電化が始まった江戸の町を舞台に、エレキテルの魔物と江戸の花(火事のこと)を結び付けた小編です。これは気が利いていますね。本編を読むと、スターリングがサイバーパンクという狭義のスタイルに限定されない才能であることを再認識させられます。
コニー・ウィリスの「ポータルズ・ノンストップ」はSF界の内輪ネタ。ジャック・ウィリアムスンの故郷に未来からのツアーがやってくるというものだが、アメリカSF界でのウィリアムスンの評価の高さを垣間見せる一遍。
テッド・チャンの「息吹」は気圧差を利用した生命体と文明が、圧力平衡による終息を迎える危機感を論述する一遍。熱平衡による終息を懸念する地球文明とのアナロジーが非常に興味深く書けている傑作だと思う。テクニカルライターとの兼業という作者ならでは完成度の高い筆致だが、ここらへんが短編集として出ていないのは残念。もう少し分量を書いて欲しい作家であることは、誰もが意見の一致する所だろう。
ところで、全体としてみると、60年代の層が薄い気がする。ディック、ゼラズニイディレーニイ、ディッシュなどがいない。また、イギリスSFのプリースト、ワトスン、ベイリー、ショウ、コーニイなどがいないのも残念。コンプトンの「イギリスに住むと言うことは」など、こういう機会でないと日の目を見ないと思うので、是非、入れて欲しかった。ワールドSF1968に入ったのだが、同書も入手困難になって久しい。ショウの「訪問者」なども良いと思うのだが。コーニイの連作シリーズは、ちゃんと一冊で出て欲しかったのだが未だに実現しない。もう無理か???