率直な感想

四部作の最終巻として謎の多くについて答えが与えられるし、それは非常にSF的なロジックになっている。また、物語は環を閉じ、新しい太陽はもたらされ、きちんと完結している。
ただ、だからと言ってこの巻の読後感が満足感に満ちているという訳でもない。むしろ、とってつけたようなまとめ方のように見えて、折角の今までの独特の沈鬱な擬中世的な世界の魅力と相容れない気さえする。
個人的には全4巻の中では3巻が一番面白かった。次は1巻だと思う。2巻と本巻は読んでいて少々とっつきが悪く、読み終わったときの満足度はかなり低かった。また、シリーズ全体として見ても結末である本巻の満足感が低かったので評価が難しくなってしまった。
いずれにせよ明確に言えることは、本シリーズは優れた作品だが、かなり読みにくい。ページを読者にどんどんめくらせるサービス精神に欠け、読者が苦労して読み進む努力を要求する。物語の進行は突然速くなったり、意味不明なほどに停滞したりする。様々なエピソードやガジェットが盛り込まれ、思わぬところで繋がりあっていて初見ではどうも全体が見渡しきれなかったという不安ばかりが積み重なる。すぐにでも再読したくなる‥という書評があったが、これはその通りだと思う。いますぐにもう一度読めば大幅に理解が深まりそうな印象を与える。その一方で初見で理解できるように書くという親切心が極度に欠如した作品であるとも言える。
読みやすい冒険譚ばかりがファンタジーやSFではない‥という実証として非常に印象深い作品。織り込まれた幾多の挿話の味わいも含めて、真に魅力的な異世界を築いていることも印象深い作品だと思う。個人的にはこのシリーズを読むことが出来て、それもまとめて読めてとても幸せだったと思う。しかし、万人に薦めるには随分と難しい作品だとも思う。