☆時はつるところを読む

bqsfgame2008-08-11

「フェッセンデンの宇宙」を踏まえてハミルトンの傑作群を訪ね歩く第二弾。
なんと世界SF全集である。それにしても本作がハヤカワのSFシリーズやSF文庫に再録されていないのは七不思議と言う気がする。
結論から入ろう。アメリカでハミルトンの代表作とされ中村氏も肯定している通り、本作は傑作だと思う。もちろんハミルトンはハミルトンであるから、文学に傾斜して小難しくなったりはしていない。非常に軽快に読み進めるし、主人公の科学者たちの活躍ぶりは、スペオペヒーローほどではないにせよ爽快感がある。
テイスト的には眉村卓ジュブナイルに似たところがあり、日常生活から突然、世界的な危機に巻き込まれその中で人々が奮闘している。その中に街の風情と街を愛する人々が描かれ、また主人公の揺れるラブストーリーも描かれている。
若干タッチが軽めではあるが、書かれた年代を考慮すれば、かなりの傑作と言って良いと思う。
さて、残るは「虚空の遺産」ということになったが、本作と「最後の惑星船の謎」の出来栄えを考えたら、これを読まぬ訳にはいかないだろうと思わせる。