ゲームレビュー:ギャラクシー・トラッカーズ

bqsfgame2009-07-30

2008年夏に発売され、人気を博したユーロゲームの新作。
惑星間輸送ビジネス会社のスタッフとして、宇宙船を建造し、その宇宙船に乗って航海に出るというゲーム。典型的な宇宙探検ゲームのように聞こえる設定だが、内容的には非常に独創的な新規軸になっている。
このゲームで中心になるのは、宇宙船の建造作業だ。
建造作業は全員同時にヨーイドンで始める同時アクションゲームになっている。プレイヤー各自は、宇宙船の大きさを規定するボードを受け取る。この上に部品タイルを置いて船を建造するのだが、タイルの山は全員共通になっていて、しかも裏返されている。これを1個取ってきて表に返して見て、適切と思うところに配置する。不要なものなら表のまま場に返すことになる。
誰かが航海に足ると思った状態になると、砂時計を取って返し、この砂時計が切れた時点で出来上がっている部品までで航海に飛び出すことになる。
宇宙船の主要パーツを紹介していこう。
まず、エンジン。これがないと航行することができない。エンジンパーツは必ず、噴射口を後ろに向けていなければならず、かつ直後のマスが空きマスでないと機能しない。ちゃんと機能するエンジンの数が、宇宙船の移動速度を規定するようになっている。
キャビンも重要なパーツで、此処にクルーを配置することができる。標準的な人間クルーなら、普通のキャビンに二人ずつ配置することができる。航行中に宇宙船がダメージを受けることでクルーが減少することがあり、人間クルーが全滅すると宇宙船は航行不能に陥ってしまう。
キャノンは必須ではないが有用なパーツで、宇宙海賊との交戦や、衝突してくるメテオの撃破に使用する。宇宙海賊との交戦では前方向きのキャノンは1戦力、他の方向を向いたキャノンは0.5戦力としてカウントする。一方、メテオは接近してくる方向に向いているものだけが迎撃に使用できる。このため、前方以外の方向へのキャノン配置が重要なケースもあり、設計は悩ましい。
ダブルエンジン、ダブルキャノンは、それぞれ推力2倍、射撃力2倍の部品だ。ただし、これらは通常部品以上にエネルギーを消耗するので、バッテリーと言われる部品と連結しておき、バッテリーのパワートークンを使用しなければならない。
バッテリーは上述のように余分なエネルギーを必要とする部品にエネルギーを供給する。バッテリーはイラストの搭載本数に則った個数のバッテリートークンが配置され、トークンは使用するたびに減っていき、最後には枯渇してしまう。
シールドジェネレーターは、その方向から接近してくるメテオや、敵のキャノン攻撃を防御するもので、稼動にはバッテリーのエネルギーを必要とする。
カーゴホールドは、航海中に遭遇する貨物の搭載機会を得て、荷物を積み込むのに使用する。積み込んだ荷物を運びきれば、それに応じた勝利得点を上げることができる。
貨物には通常カーゴの他に危険物があり、これらはスペシャルカーゴホールドにしか搭載することができない。
この他に上級ルールになると、パープルエイリアンと、ブラウンエイリアンが登場する。これらをクルーとして登場させるには、それぞれのエイリアンに対応する色のライフサポートユニットをキャビンユニットに連結させる必要がある。
パープルエイリアンは好戦的なエイリアンで、攻撃時にプラス修整を与えてくれる。一方のブラウンエイリアンは工学技術に優れておりエンジン性能にプラス修整を与えてくれる。
こうした様々な種類の部品を組合せて宇宙船を建造するが、部品は相互に一体に連結されていなければならないし、上述のように制限を満たさないと機能しないものある。
ストップが掛かった時点で各自の宇宙船を点検し、連結していない部品や違法部品を撤去する。その後、航海状況を判定していくことになる。
航海で遭遇するイベントはカードデックとして与えられている。
様々な種類のものがあるが、攻撃的なものとしては宇宙海賊、隕石嵐、戦闘空域などがあり、これらに対してはキャノンで迎撃したり、シールドで防御したりすることになる。失敗すると、船体にダメージを受けたり、クルーやカーゴを失ったりすることになる。
 この他の代表的なカードとしては、交易惑星があり、そこで貨物を積み込む機会を得ることができる。
また、放棄された宇宙船やスペースステーションに遭遇することもあり、これらをレスキューしたりサルベージしたりすることもできる。
この他に非常に特殊なイベントも含まれており、カードに個別の特別な解決方法が指示されている。
こうした航海における様々なイベントをクリアした後、到着順位による得点を精算し、無事に運ぶことができた貨物を勝利得点に換金する。
そして、再び新たな宇宙船の設計を始め、次の航海へと向うことになる。
航海が後になるほど与えられる宇宙船のフレームが大きくなり、遭遇する航海イベントの質量がグレードアップするようになっている。
こうして規定回数の航海を繰り返し、最後に累計の勝利得点を比較して勝敗を決定することになる。

実際にプレイすると分かるが、トランプの「スピード」のような同時リアルタイムアクションで実行する宇宙船設計は、独特の面白さがある。
あらゆる事態に備えられるようなフルスペックの宇宙船を設計するには、良く考えた配置をする必要があり、適切な部品を適切な順番で組み上げる必要がある。
しかし、リアルタイムアクションなので、ゆっくりと考える時間などないし、部品は裏返しで引いてくるので都合よくは来ない。
そんなこともあって、様々な駆け引きが出てくる。自分が不要の部品でも、希少価値があり人気がある部品は表で場に返すと他人を利するので、無理に配置してみたりすることもある。自分の宇宙船が不十分でも一応は飛べるなら、他のプレイヤーに圧力を掛けるために砂時計を取って時間を終らせに掛かるのも有力である。
そうすると、場によって全員が慎重で皆が頑丈な宇宙船を作る場もあれば、拙速を重んじるリスキーな宇宙船で皆が飛ばねばならない場も起こってくる。航海で遭遇する山札の組合せや、その順番によっても色々な綾やドラマも生まれてくる。ルール説明だけ読んでも面白そうなゲームだが、実際にプレイした時に存分に機能して面白い傑作ゲームだと思う。
最近のユーロゲームの中では、抜群の傑作SFゲームだと思う。