☆日中戦争を読む

bqsfgame2009-12-08

テレンス・コーから日中戦争について質問をもらってから、日本人として日中戦争について一定の知識と見解を持っていた方が良いかと思うようになり、本書を読んで見ることにした。
日中戦争は非常に複雑な要素を含む戦争であり、一冊でわかりやすく俯瞰できる入門書がないと言われている。その中にあっては、多少、偏ってはいても一定の見解をもとに全ての事象を整理してしまっている本の方が見通しが良いという。
そんなアドバイスをウェブ上で見た上で本書を手にとって見た。
本書は日本は短期決戦の殲滅型の戦争思想しか持っておらず、対する蒋介石中国は最初から持久戦を見通した消耗戦思想で戦争に入っていたという作業仮説で全てを整理している。
率直に言うが、なんでもかんでもそれで整理しようとしているので、日本軍のしたことはなんでも殲滅思想だという風に結論する乱暴さが目立ち、さすがに無理ではないかと思わされる部分もある。
とは言え、日中戦争を、
1:柳条湖から盧溝橋まで
2:盧溝橋から武漢制圧まで
3:武漢制圧から真珠湾まで
4:真珠湾からポツダム宣言受諾、南京政府解散、満州国消滅まで
という4つのフェイズに分け、それぞれごとに略年表を付け、日本軍の急前進があったフェイズ2については全体図を付けて、非常に見通しよく説明している点は大いに評価できるのではないかと思う。
個人的には本書で全体のイメージが掴めて来たので、次は満州に焦点を当てたものとか、ノモンハンに焦点を当てたものとかを各論として読もうかと思っている。
フェイズの中ではフェイズ2の記述が意外に手厚く、汪傀儡政権に関する記述が密なのが目を引く。
また、第6章として2003年に公開された検閲月報を扱った章を設けているのも特徴である。