ウィルヘルムの決断のときを読む

奇想天外のSFファンタジイ大全集からもう一編。
扉を開けると「向こう」へ行ってしまう主人公の苦悩を描いた作品。
ウィルヘルムは重苦しい雰囲気を描き出すのが得意な人だが、本作品はその特徴が良く出ている。
ファンタジーと言うと現実逃避的な文学とも言われがちだが、本作品などはむしろ人間の本質的な悩みに対峙するような印象で、読んでいて非常に辛くさえある。
傑作とか佳作とか言う印象は受けないのだが、「読書」と言うものの一側面を感じさせてくれるウィルヘルムらしい作品だと思う。