ルールを読んだし、割と手軽そうに見えたのでやってみました。
結論から言うと、これは評価の微妙なゲームです。
要点を箇条書きにすると、
1:戦略核戦争の実態を体験する教材として優れている
2:競技用ゲームとしては問題がある
3:リプレイアビリティが低い
4:内容から見て相当するのは、ウォープランドロップショットでは1950年シナリオである
説明しやすい所から入ります。ルール冒頭には1957年の記述が見えますが、内容的には弾道弾は存在せずドロップショットの1950年シナリオ相当です。これは、戦略爆撃機の爆撃アクションと、それに対する地上砲火と戦闘機迎撃でゲームを構成しているからです。逆に言うと、弾道弾が主役になってしまうと、競技ウォーゲームにならないと言うミランダの判断なのでしょう。
実際のプレイですが、実はセットアップに90分ほど掛かりました。実際にプレイに入ってからは120分ほどで、事実上終了になりました。
なんでセットアップに時間が掛かるかと言うと、初期ユニットの指定がなく、予算とユニット単価の表が与えられていて、カウンター制限の範囲でまったく自由に編成できるからです。初めてだと相場感もなく、方針も立てにくいので、どうしても時間が掛かります。で、ソロプレイで両陣営について一人でやると一時間を悠に越えてしまいました‥(^_^;
で、プレイの方ですが、デフコンレベルにたくさん投資した側が後配置で先攻になります。で、原爆や水爆で爆装した爆撃機を飛ばします。「未来少年コナン」のギガント編隊が飛び立つシーンを個人的には思い出しました。
これが相手の領土に到達すると、対空射撃を実施し、戦闘機の迎撃を受け、それを生き残れば敵の大都市を爆撃します。戦闘結果は極めてシビアで、爆撃まで辿り着けば高確率で都市は破壊され地上ユニットは根絶されます。
今回のプレイではソビエトが先攻となり、まず隣接した欧州や日本などに爆撃を実行します。後攻のアメリカは、初期爆撃を受けない後方に配置した爆撃機を後から飛び立たせます。先にソビエトが爆撃を打ち切ってしまい、ソビエトの得点が見えてしまうので、アメリカはそれを追い越せるかどうかを見極めながら報復爆撃を実施します。
前に書きましたが、弾道弾が登場するまでの戦略爆撃機の時代はアメリカに優位があったので、本ゲームでもアメリカの爆撃能力の方が高く、中盤でアメリカが追い越しました。しかし、引分けから勝利に移るに足るだけのVPは稼ぎ切れず、結局、引き分けになりました。
ただ、この過程ではいろいろとシュールなことが起こります。
爆撃機は爆撃任務を終えると、後は役に立ちません。再爆装のルールがないのです。しかし、相手に撃墜されると点を与えてしまうので、爆撃を終えたら敵の戦闘機から逃げ回ります。本土に帰っても飛び立った空港にはキノコ雲が立っているだけなので、それこそ水平線に向かって当もなく飛んでいきます。
また、アメリカの報復爆撃も点数を数えながら、必要値に達したら止めるのですが、これはゲーム的には当然ですがシミュレーションとしてはなんだかわかりません。未投下の原爆を持ったまま、帰投することに何の意味があるのかまったくわからないからです。
両国に次々とキノコ雲が林立するシチュエーションの中で、「勝利」と言うものが存在し得るのかどうか、考えさせられます。そういう意味で教材としては非常に優れていると思うのですが、競技ゲームとしては成立していない印象を強く受けます。GDWの「サードワールドウォー」では、核戦争のエスカレーションレベルを設定して、最終段階まで到達すると両者敗北だったかと思います。その意味では、このゲームは最終段階に到達してからしかやらないゲームな訳です。
そんな訳で殺伐とした空気しか漂わないので、なかなか二回目をやりたいとは思いません。それとは別に、所謂お買い物ゲームなのですが、あまり買い物が面白くありません。買い物ゲームと言うと、メタゲーミングのオーガ、アイスウォー、エアイーターの侵略などが思い浮かびます。ところが、それらに比べると、プレイヤーの作戦の幅が付かないのです。カウンター数制限の範囲で予算が潤沢にあるので、主力爆撃機を買い切って爆装し、さらに主力戦闘機、主力対空地上設備くらいまで買い切れます。後は、残りを旧式爆撃機にするか地上設備を厚くするかくらいの選択肢しかありません。旧式爆撃機と言う選択肢は名目上はありますが現実的ではありません。旧式爆撃機は実際にプレイすると、対空砲撃で落ちやすく、そうすると逆に相手の点になってしまうからです。そんなことをするくらいなら何も買わない方が良いくらいです。自分の対空設備が残っているなら、それを買うのが現実的でしょう。
そんなこともあって、買い物作業は時間が掛かるのですが、それに見合うプレイバリューを生んでいません。ここはゲームとして弱い部分だと思います。
また、ゲーム展開的にも、爆撃機を買って爆装させた以上は敵地に落としに行くよりなく、後は相手を迎撃するばかり。それほどゲーム展開的に妙味がある訳でもありません。その意味では、一度プレイして状況に対する理解を深めたら、お役御免なのかも知れないなと思いました。
ただ、戦略核戦争ゲームは近年はほとんどなかったので、当時を知らない人にとっては新鮮なのかも知れません。冷戦の時代を知らない人に、それがいかに深刻な危機だったかを理解してもらうための教材として久しぶりに一作品あっても良い時節だったのでしょう。