アナと雪の女王を見る

bqsfgame2014-05-30

週末は二日続けてテニスだったので、気乗りしませんでしたが、家内が友人に強く薦められたとのことで夫婦50割で見てきました。
いわゆるピクサー組の仕事ではないので、それほど期待していませんでした。でも、さすがにラセターが入ると、美女と野獣組でも良い仕事になるのですね。
原案は日本ではそれほど有名ではないアンデルセン童話。
この童話はアメリカでは意外に知名度があるようで、SF小説ではジョーン・ヴィンジが大作の「雪の女王」を纏めてヒューゴー賞を受賞しています。あれも、原作とはかなり違っていました。
今回はさらに物語の独創性が高くなっています。
アンデルセン童話では、兄と妹の話しで、兄が雪の女王に囚われてしまい、妹が助けに行きます。
この映画では、姉と妹の話しで、姉本人が望まざる魔法を持って生まれ、その魔力で人を傷つけ、自分も傷つき、その結果として一人雪山に魔力で雪の城を築いて孤独の魔女となり、雪の女王になってしまいます。彼女の魔力のせいで雪に閉ざされた国を救ってもらうために、妹が雪の女王に頼みに行くと言う話しになっています。
ネタバレですが、最終的には妹の愛が魔女となった姉の心を溶かし大団円を迎えます。
と言うことで、ストーリーの狂言回しは妹の方で、妹の視点で物語は終始進んでいきます。けれども、重要なのは雪の女王となる姉の方です。望まない魔法を持って生まれた悲劇のプリンセス。己の呪われた力に絶望して雪山へ閉じこもる孤独の魔女。そして、妹の愛に助けられ再び人生を取り戻し国の女王となります。2時間にこれだけの運命を織り込んであり、それぞれの局面で、それぞれの立場の感情を説得力を持って演じなければならない難役です。加えてミュージカルなので歌唱力も要求されると言う。これが務まりそうな女優さんは、松たか子くらいしかいないかなと思うのですが、その通りの配役で、やっぱり他にいないんでしょうね。数年前に「告白」が日本アカデミー賞にノミネートされた時に、監督が「松たか子と言う女優と同じ時代に生きられた幸運」と言っていたかと思います。その意味では、今回の吹替え版は正しく同じ感想を持たせる素晴らしい出来栄えだったと思います。ちなみにミュージックチャートで「ありのままに」のヴォーカル違いが上位を独占していますが、映画を見た感想としては本物は松たか子ヴァージョンなのだなと思いました。
物語前半の孤独の魔女として雪山に魔力で自分の雪の城塞を築くシーンの劇中歌として出てきますが、圧倒的な情感で素晴らしい出来だと思いました。訳詞も非常に上手くできていると思いました。このシーンが映画全体でもベストの出来ではないかと思います。
主役のアナに抜擢の神田紗也加も健闘しており、劇中歌の「雪だるまつくろう」は姉妹の関係を繊細に歌い上げていると思います。
ちなみに、ダブルプリンセスを主役とした映画はディズニー史上初だそうですが、特に奇を衒った印象はありません。素直に見て、素直にハッピーエンドを迎えられるストレートな作りだと思いました。
ストーリー構成の勝利と言って良いと思いますが、このストーリーが完成するまでに10年を越える歳月が掛かったと言いますから本作を諦めなかったディズニー総力の勝利なのでしょう。
余談ですが、ヴィンジの雪の女王は続編(世界の果て、夏の女王)が書かれました。この映画にも続きはあり得るのでしょうか?