☆内死を読む

bqsfgame2014-05-31

シルヴァーバーグ再読月刊のフィナーレを飾るのは、サンリオSF文庫の内死。
本書は今の所は再版の見通しがないようだが、ニューシルヴァーバーグの中でもベストではないかと思う。
ガラスの塔、不老不死プロジェクト、内死と3作に共通することは、設定はバリバリのSF。でも、小説としての読み応えは設定とはあんまり関係ないということだ。
ネタバレになるが、設定を説明しておこう。
主人公は、シーリグ。実は、彼は受信型テレパシー能力者である。
ところが、彼の能力は近年は、急激に衰えている。このテレパシー能力者としてのシーリグの終りを称して、内側の死、内死と言う訳である。
シーリグは、優秀な頭脳と、超能力を併せ持ちながら、その能力に罪悪感を持っており、その人生は成功していない。今でも卒業した大学の周辺に下宿していて、学生のレポートの代筆と言う余り威張れない仕事で日銭を稼いで暮らしている。
その特殊能力の故に、家族とも上手く行かず、恋愛も上手く行かない。
本書では、彼の冴えない日常生活を軸に、彼の過去のトラウマについて断片的に語っていく。そして、間に、彼が代筆する文学関係のレポートが挿入されている。
なんとも地味に聞こえると思うが、本当に地味なので説明としては正しい‥(^_^;
訳文は例によって固く、改行が少なく箱型に活字が密集しているページは、読む意欲を削ぐこと夥しい。それでも、読み進めていくと、なかなか面白くて3日間で読み終ってしまうのだから、リーダビリティは良いと言うべきだろう。
この辺の地味な話しを読ませる力は、さすがはシルヴァーバーグと言うべきであろうか。