「落日」に続いて読みました。2009年の本屋大賞ですから、既に14年も前になります。松たか子主演で映画化されました。
初めて読みましたが、吐き気がするほどおぞましいのに、一度、ページをめくりはじめると本を置くことができない魔力があります。
視点人物がどんどん移動していくのが独特です。
第1章では担任教師が自分の娘の死についてクラスに対して、この中の二人によって殺されたと告白します。そして、二人にエイズ患者の血液を盛ったと言い出します。
第2章では告発された一人が不登校となり、新担任に協力を要請されて彼に授業のノートを持って行く女子委員長が視点人物になります。実は彼女はその男の子に昔は憧れていたのです。しかし、彼女は新担任の行動動機が自己満足でしかないのではないかと疑います。
第3章では不登校の男の子の母親に視点が移ります。彼女は「自分は完璧な親だ」と自負しており、不登校の原因は前任の担任にある(←間違いとは言えません)として学校に抗議を続けています。しかし、彼の潔癖症(自身がエイズに感染したと思っている)の原因を知ることなく、彼が本当に殺人者であったことを告白され親としての自信を喪失し無理心中しようとして逆に自分だけ刺されて死んでしまいます。
第4章では、この不登校で母親を刺してしまう少年が視点人物となり、彼から見たもうひとりの少年の姿が描かれます。
第5章では、本件の主犯格であるもう一人の少年が登場人物となり、彼が何のために共犯者を必要とし、そこに上記の少年を選んだかが説明されます。二人の少年は共犯ではありますが、お互いを馬鹿にしていることが痛烈に描かれています。
書き下ろしで追加された最終章では、前章で主犯格の少年が爆弾を作成して自殺しようとするのを、第1章の前担任が阻止した上で、爆弾を別の場所に仕掛け直して彼が世界で唯一人、尊敬する自分の母親を自分の手で殺させてしまうという極めて後味の悪い終りです。