○アンブロークンアローを読む

bqsfgame2015-10-22

神林長平戦闘妖精雪風の10年ぶりの第3作品集。
読むまでに1年以上も本棚で寝かせてしまった。
今回は、ジャムに寝返った人間、ロンバート大佐から、地球のジャーナリスト、リン・ジャクスン宛に宣戦布告が届く所から始まる。
そもそも「ジャムは雪風と戦っており、雪風に付属している人間がどんな機能を果たしているか理解できていない」節は前作からあった。今回、ついにジャムは、ジャムに寝返った人間を利用して人間に戦いを挑んできた。
ただ、そこは得体のしれないジャムのすることなので、普通の戦争にはならない。言語入力を通じた欺瞞攻撃で、人間の作った機械と人間を戦わせて殲滅しようとしている(らしい)。
雪風がジャムと戦うために人間を利用している」傾向が前作以上に強くなり、結果として人間を利用したジャム対雪風の代理戦争の様相を呈してくる。それも言語を利用した世界認識上の戦いと言う、神林ワールドならではの異様な戦いになる。
かなり哲学性が強くなって、リーダビリティは前作までより低下している。読後感も不透明。戦いに決着が着くわけでもない。したがって、次がありそうだが、数年は待たされることだろう。
SFコンテスト受賞第1作から始まった本シリーズは、1979年スタートで、実に36年になった。神林長平のライフワークであることは間違いなく、デビュー当時からのファンとしては最後まで着いていくしかないと思っている。
一体どこへ辿り着くのか?
「あな魂」三部作のように完全調和して完結するのだろうか???