○橋本宇太郎(上)を読む

現代囲碁大系の第6巻です。箱入りの立派な本で、こういう打碁集が売れた時代があったとは、隔世の感があります。現代と言っても、1980年代に刊行された全集ですから、今となっては半古典でしょうか。橋本宇太郎先生が亡くなったのは、1994年ですから、これも既に24年前。20、30代の人は、既に知らないでしょう。
関西棋院の総帥にして、火の玉宇太郎と称された気魄の碁打ちです。
彼の大「木谷」の兄弟子でありながら、呉木谷の時代を越えて昭和の終りまで活躍しました。
本書は二分冊の上巻で、修業時代から始まって関西棋院発足直後くらいまでです。
関山初代選手権制本因坊の病気リタイヤで不完全燃焼で本因坊となり、原爆下の対局で岩本九段と争い、関西棋院独立直後の日本棋院の若手刺客、坂田栄男を逆転で退けた棋譜が並びます。ここら辺が一番面白いでしょうか。
あと呉清源との棋譜が多いのも特徴。呉清源が亡くなった時に、呉清源の巻を買おうか迷いましたが、本書にかなり入っていたので見送りました。
宇太郎先生の棋風は早見え早打ちで、足が速く厳しい手段を厭いません。今回まとめて読んでみて思ったのですが、張栩九段に少し近いかも知れません。違う所は、早投げで粘り弱い所でしょうか。良い意味でも悪い意味でも天才肌の棋士だったのだなと思います。
東西対抗戦の山部戦はもちろん入っています。あちらこちらで見掛ける棋譜ですが、橋本宇太郎の歴史の中で見ると、東西対抗戦の意義と共に少し別の感慨を抱きます。天才肌で早投げ同士の対局ですね。