p10
人は無視、賞賛、非難の段階で試されるという。
全く話にならない段階では無視。少し見込みが出てきたら賞賛する。そして中心になった時点で非難するのである。
p12
ただやみくもに叱ってはいけない。それでは逆効果になってしまう。とくに若手選手と接するときに大切なのは、絶対に結果論で叱らないことである。
p16
「組織はリーダーの器以上には大きくならない」と私は思っている。つまり、組織の伸長は、指揮官のレベルアップ如何にかかっている。
p18
「教えないコーチは名コーチ」メジャーリーグにはこういう名言がある。(中略)
私はいつもコーチたちに言っている。
「なるべく教えるな」
なぜか。教えすぎると、選手がみずから考えることをしなくなるからである。
p38
人間は自己愛で生きている。だから、自分に対する評価はどうしても甘くなる。適正なものではない。言い換えれば、他人が下す評価こそが、その人間の真の価値であり、評価なのだ。
p40
「自分はそこそこやれているじゃないか」「こんなに一生懸命やっているじゃないか」と現状に満足してしまう。
p43
「この監督についていけば絶対に勝てる」と思わせなければいけない。
いいかえれば、いかに選手の信頼を勝ち得るか。それが最初の仕事なのだ。
そこで重要になるのが、最初のキャンプである。
p76
アスレチックスというチームは、貧乏球団として知られている。にもかかわらず、毎年のようにプレイオフに進出している。
その秘密は、まさしくスカウティングにあった。徹底的なデータ主義を採用したのである。(中略)
といっても、アスレチックスが重視するのは、得点圏打率や打点、防御率といった誰もが注目するデータではない。目をつけるのは、打者ならば長打率と出塁率、そして出塁率に大きな影響を与える選球眼。投手なら被本塁打や与四球の少なさと奪三振の数である。
p79
もうひとつとくにスカウトにいうのは「足が速い、球が速い、ボールを遠くに飛ばす、そういう天性を持った選手を探してくれ」ということである。というのは、天性ばかりは育成することができないからだ。
p136
「どうやって人を再生させるのですか」
よくそう訊かれる。すると、私はいつもこう答える。
「その選手に対する愛、そして情熱です」
p170
それからというもの、稲尾との対戦成績ははるかに向上した。
ところが、オールスターのときに杉浦忠がその秘密を稲尾にばらしてしまった。
そのときは杉浦をうらんだ。だが、振り返ればかえってよかったのだといまでは思っている。相手が対抗手段を講じてくれば、こちらはさらなる対抗策を考えればいい。それがおたがいの成長を促すことになる。
p176
南海の監督時代には、指導法における私のベースを築いてくれた出会いもあった。愛情を込めて三悪人と呼んでいる、江夏豊、江本孟紀、門田博光である。この三人ほど、能力が高く、個性的であり、チームの足を引っ張る選手もいなかった。