伊藤典夫翻訳SF傑作選2です。
それにしても前作「ボロコーヴはミムジイ」から2年半とは、気が長すぎます。
内容的には、かなり良いと思います。
ラインスターの「最初の接触」は、それこそサブジャンル名称ともなった本テーマの代表作。筆者が中学生の頃のSF入門書には、必読短編の一つとして挙げられていました。実は今回が初読。理由は、本作品がSFマガジンから、直接、世界SF全集に収録され、どんな文庫版の短編集、アンソロジーにも入っていなかったからです。
初めて読んだ感想としては、世評ほどのインパクトはありませんでした。ちょっと「スタートレック」ライクに過ぎるかなと言う印象です。
集中の白眉は巻末のアンダースンの「救いの手」です。
星間戦争で疲弊した独自文化を持つ類人エイリアン2種のどちらを援助するかという星間会談で始まります。芸術家肌の美しく人当たりの良いエイリアンを支援することにしたソル文明。しかし、50年後に、もう一方の傲岸不遜なエイリアンは「最終的に勝利したのは自分たちだった」と確信します。
エキゾチックな文化を持つエイリアンが登場するという点で、ジャック・ヴァンスを思わせる一篇です。アンダースン特有の「説教くさい」感じは否めませんが、割と説得力のある結末だと思いました。
ウィンダムの「生存者」は、正に宇宙船での生存者のお話し。一種の方程式ものです。限られた食料をどう分け合うかで争い、その結果として死んだ人間も食料として分割してしまう話しです。そして、最後に救命隊が来た時に見た最後の生存者の姿は。ウィンダムは破滅テーマの巨匠とも言われますが、この短さの中で真の破滅感を読者に与えるのはさすがです。
集中最長の「キャプテンの娘」は、PJファーマーです。ワンアイデア作品で、フクロムシの生態を宇宙に持ち出したものです。少々、寸が長すぎて序盤の展開がゆったりしすぎな印象はありますが、奇妙な生態を描かせたら右に出る者はありません。
ジェイムズ・ホワイトの「宇宙病院」も、ジャック・ヴァンスの「跫音」を思わせる怪作です。宇宙中のあらゆる生命体が集う病院のプロジェクトとして、ブロントサウルス型の宇宙人を、超能力を持つエイリアンと組んで治療するという奇天烈なお話しです。