○民主主義を救え!を読むも、終りまで辿り着けず

テレビで紹介されていて、今の時代には一読すべきかと思い、図書館で借りました。

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一緒に借りた「叛逆航路」のリーダビリティの悪さに時間を掛け過ぎてしまいました。結果として、本書自体はリーダビリティが良いのですが、抜き読みになってしまいました。

p1

リベラルデモクラシーの勝利は最近まで、確固たるものにみえた。多くの欠点があるにせよ、市民のほとんどはこの統治様式を深く愛していた。

p5

アメリカの高齢者の三分の二は、民主主義国に生きることが非常に大事だと回答している。しかし、ミレニアル世代(1980年代生まれ)では、この割合は三分の一にまで低下する。

p8

ドナルド・トランプマリーヌ・ルペンらはみな、既存の政治家が主張するより現代の最重要課題は簡単に解決できると主張する。こうしてアメリカはふたたび偉大になるのだ、と。

p17

デモクラシーが生まれてからというもの、それは少なくとも三つの要素に特徴付けられていたが、今日ではそれらの条件はすべて揃ってはいないのだ。

デモクラシーが安定していた時代、市民は生活水準の急激な改善を経験していた。しかしそれ以来、所得は横這いのままだ。

(中略)

デモクラシー安定の歴史においては、特定の人種ないしエスニック集団が支配的地位にあった。アメリカとカナダでも明瞭な人種的な序列があり、その頂点は白人が占めていた。

(中略)

最近まで、マスコミュニケーションは政治的、経済的エリートが独占していた。新聞紙を刷ったり、ラジオ局を運営したり、あるいはテレビネットワークを管理するコストは、一般市民が担えるものではなかった。

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本書を読み進むうえで、リベラルと、デモクラシーを、別の概念としてきちんと識別する必要があります。この二つは、通常、表裏一体の概念として、あまりきちんと区別されずに用いられているので要注意です。

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p29

デモクラシーとは、民衆の考えを公共政策へと実質的に転換できる選挙による制度/機関のことである。

リベラルな制度/機関は、すべての市民の表現、信仰、報道、結社の自由といった、個人の権利や法の支配を守るものである。

(中略)

二つの新しい体制。一つは、非リベラルな民主主義、あるいは権利なきデモクラシーであり、

もう一つは非民主的なリベラリズム、あるいはデモクラシーなき権利である。

第一章 権利なきデモクラシー p34

このような過程を最初に歩んだ民主主義国は、イタリアだった。1990年代、この国の政治システムは大規模な汚職事件によって機能停止に追い込まれた。イタリアを支配してきた政党は解党させられるか、選挙で壊滅に追いやられた。この空白を最初に利用したのは、自身が汚職の嫌疑を掛けられていたベルルスコーニだった。システムを一新し、国を豊かにすると約束した彼は、政権を手にする。

p37

ポピュリズムには、本質的にデモクラティックな要素がある。しかし長期的にみれば、その擁護者がいうほどには、人々の意思を尊重しているわけではない。

第2章 デモクラシーなき権利

p59

アメリカ建国の父にとって代表制による共和政は次善の策などではなく、民主主義と言う世を分断する悪物よりも好ましいものだった。ハミルトンとマディソンが明らかにした通り、アメリカ共和制の本質は人民とその集合的能力の完全な排除だったのである。

p64

気候変動や格差拡大と言った人類が直面している喫緊の課題は、真にグローバルな問題であるゆえ、解を見出すことは国家の範疇を超えていることである。

(中略)

こうした人々の代表の権限の喪失はエリートたちの陰謀によるものではない。これらは漸進的な現象であり、現実の政策的課題に対応するためのものなのだ。

p68

伝統的な官僚機構は、法令を執行する役割を負っており、大統領や首相が任命した政治家によって主導される。しかし、こうした仕事は増える政策領域においていわゆる独立行政機関によって補完される。これらが設立されると、法的に困難で、技術的に複雑で、政治的にセンシティブな決定を任されるようになる。

p70

誤解しないでもらいたい。独立機関は、その名に恥じない働きをしている。それでも民意の尊重と複雑な政策的課題の解決は、深刻なトレードオフにある。独立機関が容易に達せられない問題解決を可能にする一方で、その重要な決定が政治的争議の場から隔離された場所で行われていることは事実なのだ。

 p81

「誰が統治しているのか?」という問いに対して、4つの説が存在してきた。1:平均的な人々の意見、2:経済的エリート、3:大衆的基盤を持つ利益団体、4:小規模な利益団体。

ギレンズとペイジは二十年間に渡って政策を調べ上げて、その結論は衝撃的なものだった。経済エリートと小規模利益団体こそが大きな影響力を持つことがわかったからだ。

p102

戦後に実現した大前提が問い直されている。リベラリズムとデモクラシーは、学者が想定してきたのに反して自然な組み合わせではない。民意が個人の権利とますます衝突するようになったことからわかるように、リベラルデモクラシーは分離しつつある。

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長くなったので続きます。