戦闘機:第5部:結果(引用)

p256

ずいぶんな年月が経過した後にパークが、「ダウディングと私がバトルオブブリテンに勝利をもたらすなり、私たち二人を失脚させようとして用いられた卑劣な陰謀や策略のかずかずは、死ぬまで忘れらない」と告白したという‥

p264

ドイツの戦史家たちが非をならしてやまないものに、イギリス側がドイツ空軍の損害を意図的にはなはだしい水増しを加えているという点があるが、(中略)イギリス側で敵に与えた損害がかくも誇大化してしまったのは、戦闘機パイロットの帰還報告をそのまま鵜呑みにしていたからに他ならない。

p275

戦況の推移につれてドイツ空軍では、戦闘機隊の役割がますます重視されるようになっていた。後半戦に入ると、肝心の攻撃兵力である爆撃隊と、それを直接護衛する戦闘機隊兵力との間に、大変な懸絶があるようになり、爆撃隊の兵力が、動員が可能な戦闘機隊の兵力によって決定される事態が生じていた。このような事態になっても、ドイツ空軍が落下増槽を供給するための手配をいっさい行わず‥

p276

Bf109の行動半径の貧弱さは、ドイツ空軍がその野戦機動能力を深く倚信して航続性能の大なる戦闘機を必要と考えず、(中略)その用兵思想の裏付けには、ドイツ空軍の擁していた膨大なユンカースJu52/3m三発輸送機兵力があった。この輸送機兵力は、友軍の快進撃に膚接せんばかりにして、占領確保したばかりの制圧地域飛行場に対する大規模な人員機材の追従戦術的輸送を可能としていたのである。この輸送能力あればこそ、(中略)常に友軍最前線のすぐ後方の基地からの行動が可能だったのである。

p279

ドイツ空軍にとって落下増槽の使用は、直衛任務の交代行動を完全に解決したろうことはもちろん、戦術の上でももっと重大な変化をもたらしたにちがいない。すなわちドイツ空軍はその戦闘機隊をオランダに展開すればよかったのである。ここはイギリス側のレーダー警戒網の到達範囲外だった。したがって行動の秘匿が可能になり、空襲部隊は海上を遠く迂回路をとっての進攻が可能となっただろう。それに帰りの燃料切れで多くのパイロットが溺死したのを防げた浪士、彼らが再度の出撃を行い得たことであろう。

p280

ドイツ空軍の眼からすれば、イギリス軍の地上防空兵器体系は対空火器ひとつとってみても、「なってない」ものでしかなかった。(中略)この貧弱きわまる実情を表現して余りあるエピソードに、敵機撃墜報告をもって帰ってきたパイロットが、それを高射部隊のお手柄にしてやってくれと頼まれたことも一再ではなかったという。

p286

一般的にイギリスは、技術者と軍人と企業家という三者が一丸となって戦争に協力する点にかけて、他のいかなる国の追随も許さなかった。この肌合いの違う三社を協調させるやり方は、ドイツ人のついぞ持ち合せなかった特性であり、それゆえドイツは敗戦を招くしかなかったのである。

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p287

イギリスの生み出す兵器はいかにも急ごしらえの寄せ集めといった感じのものが多く、機能も完全からは程遠い(中略)、具合の悪い個所もどこの家庭にもある缶切り程度の工具やハンダごての類さえあれば誰にもなおせそうだったし、事実またその通りいとも手軽に改修できたのである。