戦闘機:第4部その2を読む:感想

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後半戦になると、ドイツ空軍側がイギリス制空権を握るにも、爆撃でロンドンを屈服させるにも力不足であることが判ってきます。まぁ、結果を知っている我々からすると、何をいまさらではあるのですが、当時のドイツ空軍の責任者の焦燥は想像するに余りあります。

大戦開始前の時点で、高高度爆撃隊を戦闘機隊で迎撃できるとは、多くの空軍関係者は考えていませんでした。したがって、爆撃隊に戦闘機の護衛を付ける必要があるとも考えていませんでした。

Me109Eは世界の傑作機と呼ぶに値しますが、ロンドンまで護衛して空戦をして帰還できるような航続距離は持っていませんでした。このことは、後続のロシアも含めて陸続きの電撃戦では問題になりませんでした。バトルオブブリテンが進展するに連れて明らかになっていったことなのです。

その意味では、ドイツ空軍の戦略思想のなさを指摘するのは簡単ですが、本当にそれを事前に準備できたかと言えば答えはNOなのでしょう。準備不足はイギリスのスピットファイアもそうだったのは前述しましたが、彼らにはロンドン上空で迎撃すれば良く海峡を渡る必要がないという大きなアドヴァンテージがありました。

ドイツ空軍が真になにか成し得たとすれば、こうした状況を把握した上で必要なリソースの投入対象転換を速やかにすることだったでしょう。しかし、ドイツ軍は分析も甘く、ゲーリングの場当たり的な指示で事態を悪化させることしかできませんでした。ドイツ空軍の他の上位責任者の誰一人として、ダウディングやビーヴァーブルックのような正しい判断もコミットメントもできなかったことが最終的な敗因でしょう。

それにも関わらず、準備不足で、PDCA能力も皆無なドイツ空軍は、RAFを壊滅させる寸前まで追いこんだのです。

本書を読むと、著名なバトルオブブリテンは、両軍の凡手、悪手の応酬の末に、イギリスにわずかに残った世紀の凡戦だったことが判ります。まぁ、それを言ってしまうと、バトルオブブリテンをプレイする感慨が薄くなってしまうのですが(苦笑)。

ゲーリングが敗戦後も言い訳を重ねているのには驚きますが、どこかの国の政治家で言い訳を言い張ることで頑張り倒している人もいるので、これは人の性なのかも知れません。

野村克也は、人は誰も自己愛が強いものと看破しています。