戦闘機:第4部:戦闘の記録を読む(引用2)

p138

それにも増してこの日の戦闘がドイツ空軍の戦略傭兵思想を根底からゆさぶることになったのは、ドイツ爆撃隊は戦闘機、それも単座の戦闘機の護衛がないことには、作戦することができないことが実証されたのである

p156

Ju87シュツーカ隊の損害が甚大なため、もはやこの機種は組織的な迎撃の前には無力化していると判断され、第一線からさげてしまうことも決定された。

p158

ゲーリングは戦闘機の名パイロットの双璧、メルダースとガーラントを呼びつけた。戦闘機隊はもっと爆撃隊の至近に近接して直衛を行うようにと要求した。(中略)

いくら御託だろうといったんゲーリングが口に出した以上、綸言汗の如しとやらで、この命令は文書にして下達されることになった。

p162

そして今や迎撃戦闘で指揮に当っている指揮官クラスの者の中にさえ、実戦の経験が皆無の者が珍しくはないというありさまになっていたのである。(中略)

それにひきいられる列機にいたってはさらにひどかった。単座戦闘機による実飛行時間が十時間未満の者さえかなりの数に達していた。

p166

いうまでもなく単座戦闘機は、前方固定武装しかもっていない敵機攻撃専門の機種である。したがって攻撃行動では機種を敵機に向けて突進しなければならない。ところが、友軍爆撃隊の至近に占位して離れないようにと厳命されたのでは、戦闘機本来の攻撃動作が禁じられてしまう。

p211

ドイツ軍の情報網は、イギリス空軍作戦室は地下深く設けられていると思いこんでいたが、実情は地上露出の脆弱この上ないものでしかなかった。通信ケーブルですら、空中架線になっているありさまだった。

p214

ドイツ空軍パイロットにとって、イギリス海峡は難物だったようである。(中略)

「おれたちのうちで被弾かエンストかで海峡に不時着水して泳がされたことのない奴なんて、それこそかぞえるほどしかいやあしませんでしたね」

p222

もしドイツ空軍が他のいかなることにも眼もくれず、この戦闘機軍団基地の攻撃戦法のみに専念していたならば、たぶんイングランド南東部空域の制空権を掌握するにいたっていただろう。だが結局ドイツ空軍はそれをしなかったし、

p227

捕われの身になって後に、ゲーリングはこの当時のことについて語ったことがある。彼によれば、自分は敵航空基地の攻撃のみを続行することを望んでいたが、ヒトラーが報復的な爆撃を要求したのだそうである。しかしゲーリングの証言を実証するものは何ひとつないのである。

p245

絶滅しないでともかく存続しつづけるということだけによって、戦闘機軍団はバトルオブブリテンに戦略的勝利をかち得たことになった。