民主主義を救えを読む つづき

第4章 ソーシャルメディア p141

中世後期まで、情報を大勢の人口に届けるのはたいへんなコストがかかり、骨の折れる作業だった。長文を複写するためには、専門家か僧侶の手を借りて、原本から一文字一文字を書き写さなければならなかった。もう一部作るには、同じ作業を繰り返す必要があった。

(中略)

これは、活版印刷の発明がいかに歴史的なことだったのかの理解につながる。

p142

シャーキーの言葉で言えば「かつてはラジオやテレビ塔、あるいは印刷機をもなければならなかった。今ではネットカフェか公共図書館にいけば、自分の考えは公衆に届けられる」ようになった。

p146

チュニジアに続いてエジプト、さらにシリアでも大々的な抗議運動が展開され、長期に亘る独裁政権が権力の座から追い払われた。抗議者たちはソーシャルメディアを活用、政府を批判し、抗議運動の時間と場所を知らせた。

p151

ソーシャルメディアはリベラルデモクラシーにとって特段よいものでも、悪いものでもないのではないか、というのが私の主張だ。ソーシャルメディアはインサイダーとアウトサイダーとの間の技術的落差を埋める作用を持つものなのだ。

p152

携帯電話が登場するまで、反乱軍に対して政府軍は非常に大きな技術的優位を持っていた。固定電話やラジオを独占していたことで二つのものを有していた。一つは集合行為にまつわる、日常的な行動監視、定期的な命令。次は、協調問題に関わる。戦闘が始まれば兵士たちは他の部隊が何をしているのか、敵がどこにいるのかをリアルタイムで知ることが死活問題となる。

第5章 経済の停滞 p157

過去三百年間は異常な時代だった。

歴史を通じて経済成長のあった時期はまれだった。アテネから蒸気機関の時代までの平均成長率は0.1%にすぎない。その主たる原因も人口増によるもので家計の向上によるものではない。

(中略)

イギリスと言う国は18世紀になって年1%の成長を経験し、19世紀には年2.5%の成長を見せた。数百万もの人々が初めて、自分の一生のうちに経済が成し遂げ得ることを目撃したのだ。

p159

それも過去のことだ。

対照的にこの数十年間は、先進国の経済成長は大幅に停滞するようになった。アメリカ経済は、戦後の二十年間、平均4%で成長したのに対し、過去二十年で2%へと減速している。フランスでは過去二十年の平均成長率は1.5%にすぎない。これはドイツも同じである。

第3部 何をなすべきか p192

権威主義的なリーダーが権力を握った国々では、根本的なゲームのルールが変更されリベラルデモクラシーが危機に直面している。

(中略)

野党や反対勢力がその行動を制するのは、一般的にいって容易ではない。それでも、韓国のように(朴槿恵政権の弾劾訴追を指す)、危険な法や政令に抗議するため街頭を占拠し、信じる大義がどのようなものであるのかを敵対的な議員に知らしめなければならない。そのためには、数多くの集会、手の込んだ段取り、絶え間ない資金集め、そして自らが信じる大義と一見関係のないようなたくさんの退屈な作業をこなさなければならない。

p194

こうした指導者がいったん権力を握ってしまえば、困難は増すことになる。従ってポピュリストに抵抗するには、彼らを選挙で打ち負かすことは重要になってくる。

(中略)

この事実は、カチンスキやモディ、そしてトランプがこれから再戦を目指すタイミングがいかに死活的なことであるかを示している。もし打ち負かすことができれば、リベラルデモクラシーは少なくとも短期的には復活することになるだろう。

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 本書の最大のメッセージは、第3章の「何をなすべきか」であり、その中でも上記引用中の臙脂文字部分になろう。

大変に幸いなことに、今回のアメリカ大統領選挙の結果、アメリカに於けるリベラルデモクラシーは短期的には生き延びることができたようです。