SFマガジン2020年10月号を読む2

「2018年4月1日」

劉慈欣です。

大金を出せば遺伝子手術で長命を買える時代。会社の資金を横領して長命を買おうとしているが、彼女と別れることになるので逡巡する男の話しです。

筆者の世代だと「銀河鉄道999」の哲郎の悩みを思い出します。永遠の命を得るのと引き換えに、人は何を失ってしまうのか。

「火星のレディ・アストロノート

「宇宙へ」のメアリ・ロビネット・コワルの同作と同じ世界、登場人物の後日譚です。

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後日譚ですが執筆順では同シリーズの最初に当るそうです。そういう意味では最初にこちらを読むのも一つの正解かと。

かつて火星探検のヒロインだった主人公も老年を迎え、同じく終末期を迎える夫と暮らしています。そんな老夫婦に再びやってきたミッションを巡って二人は‥。

味のある短編です。俄然、「宇宙へ」を読むのが楽しみになってきました。

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↑ 未訳の続編です。

「クランツマンの秘仏

柴田勝家の中編。

スウェーデンの東洋美術研究家、クランツマンによる信仰の対象は、信仰の量に比例したなんらかの質量を持つという疑似科学研究報告書。

と言うか、逆に「そうした質量を持つから人々の信仰を引力で惹き寄せるのだ」と言う仮説から出発して、それを利用して信仰によって質量を無から発生させる実験に至るまでを語ります。

久しぶりに最新に近いSFマガジンの読み切りをいろいろ読みましたが、やっぱりSFマガジンって良いですね。高校から大学に掛けてずっと最新号をリアルタイムで読み続けていた頃のSFに対する熱気を思い出しました。

最後に、特集の一節から

「筆者がSFを読み始めた76年、既に本屋にHSFSはなく、創元から出ている諸作は購入できたものの、早川だけが出していた高名なSFは全く手に入らず、随分悔しい思いをしたものである」

「『地球の長い午後』や『発狂した宇宙』の近刊予告を見つけた時の喜びはひとしおであった。」

SFの歴史をわずか1・2年で一気に辿る濃密な読書体験が可能だったのである。」

ああ、そうか。SFの黄金時代は15才だと思ってきましたが、15才に意味があったのではなく、たまたまハヤカワ文庫の一番良い時期に自分は15才だったのだなと思いいたりました。なんと幸せな中学生だったことか。

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自分的には、「地球の長い午後」はこの表紙です。