〇贋作ゲームを読む

山田正紀のクライムノヴェルです。

中編4作。

表題作は幻の欧州作家の贋作が美術館に収蔵されるのを妨害しようとする話し。贋作作家の美人の娘の依頼に動くのですが、実は主人公には別の動機があるというオチです。「コンフィデンスマンJP」の名画篇や、萩尾望都の「メッシュ」にもありますが、美術界では贋作は日常茶飯。それを巡るもろもろのドラマもまたありふれているのでしょうが、美術館の威信を掛けた防犯体制を破って贋作を取り返す難題に挑みます。

スエズに死す」は、爆発物処理のエキスパートの主人公が娘を誘拐されてスエズ運河に仕掛けられた解除絶対不能の機雷群を処理する話しです。娘を誘拐したパレスチナ解放戦線の「風」との駆け引き、風を逮捕しようと全力を挙げる部下との腕試しが絡んで、本書中でもベストの出来栄えです。そして、「風」の意外な正体とは。

「エアポート‘81」は、うだつの上がらない映画マンが、ハイジャック映画の脚本を作っていたら、それを利用して本当にハイジャックをしようという犯人に利用されかかる話しです。しかし、脚本の脱出方法には欠陥があり、そのままは実行できないのですが、それを火事場の馬鹿力でなんとかしてしまう話し。実は‥。

「ラストワン」は、巨大ビルの空調設計者が、その知識を見込まれて同ビルの中心部に据えられた難攻不落の金庫の中の盗難金を奪取しようとする話しです。

 

「あなたもSF作家になれるわけではない」から「火神を盗め」を発掘し、その解説から本書へと繋がりました。ここから今度は「アマゾンゲーム」へと進む予定で、徳間文庫の「剥製の島」を捜索中です。