○霧に橋を架けるを読む

bqsfgame2015-06-13

良く行く書店に、SFが読みたいのリスト順に本が並んだ。
その一冊が本書だったので、図書館で借りてきた(笑)。
キジ・ジョンスンは、クラリオン出身の短編中心の女流作家。ティプトリーエリスンと比較されることの多い人らしい。
全体に、割と残酷なことを冷静に描き、底流に優しい視点が隠れている印象。なるほど、ティプトリーエリスンと比較したくなるのが良く判る。
表題作は、どこかの異世界にある大陸を二分している腐食性の霧の大河に橋を架ける話し。工学SFと言えばその通りだが、橋を架けることで世界を変えてしまうということ、建築家はどんなに地元の人と仲良くやっていても必ず余所者であるということなど、単純にハートウォーミングでない中編。
巻頭の26モンキーズは、不思議な猿たちのサーカスを買い取り、そして売り払うまでの物語。この作品だけだと、トム・リーミイを思い出したのだが、いかがだろうか?
巻末の「変化の後で‥」は、ペットたちが喋る能力を得たことで人間との関係が維持できなくなってしまうという辛辣な作品。犬との関係が壊れていくということで、エリスンの「少年と犬」を連想するのはもちろん。しかし、本作はずっと悲しい結末に至る。
専業作家ではなく寡作なようなので、次の本が出るかどうかは怪しいが、また読んでみたい読後感だと思う。本書を新叢書の序盤に持ってきたのは、創元社の慧眼だと思う。