タイムトラベルものには、タイムパラドックスが付き物です。
本書でも、そもそも第二次欧州大戦ではどちらが勝っていたのかという大問題が軸線になっています。
それはそれとして、ちょっとした手妻が盛り込まれています。
アイリーンは、アガサ・クリスティーのミステリーを愛読するのですが、アガサは正に大空襲下のロンドンにいます。
そこで、彼女は、執筆前のアガサに、自分が読んだ作品の話しをするのです。
さて、では、このミステリーのアイデアを最初に思いついたのは誰なのでしょう? アガサでしょうか、アイリーンでしょうか?
広瀬正の「マイナスゼロ」も主人公がパラドックスを予防しようと奔走するのに、娘が最後の最後にちょっとしたイタズラを仕掛けて唖然とさせてくれます。あれに、とてもテイストが近いお話しです。