〇人間がいっぱいを読む

ハリイ・ハリスンの代表作の一つです。

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時は1999年、地球の人口は70億に届いており、ニューヨークマンハッタンは人間でいっぱいの状況。そこで起きた一件の殺人事件を、どちらかと言えば捜査する刑事側から描いた作品です。

第一部は、意外に普通のニューヨークを舞台にしたミステリーとして読めます。その理由は、実際のニューヨークが1980年代にゴッサムシティと比肩される程に治安が悪化したからです。我々にとって、「治安の悪いニューヨーク」はフィクションではないのです。また、ニューヨークの地名があちこち出てきて、親切に地図が付いているのは良いと思いました(日本語版での配慮)。

第二部では、水の配給規制、食料の配給規制と、人口爆発SFの本領を発揮します。そして、出産規制デモから同居人の死、それによって発生した空き部屋に対する法的強制使用の執行と続きます。

この本が執筆された当時(1966年)は、将来の人口爆発リスクがホットトピックだったので、相次いで同じテーマのSF作品が登場しました。日本で名の知れた作家のものとしては、ハリスンの本書、ディッシュの「334」、ブラナーの「ザンジバーに立つ」、シルヴァーバーグの「内側の世界」があります。ここらへん、人口爆発四天王といった所でしょうか。ブラナー作品だけが依然として未訳のままです。もう訳されないのでしょうか? 国書刊行会とか集英社さんとか、価格が高くても買いますからお願い(笑)。

閑話休題

題材は陰鬱なのですが、リーダビリティは良くスムーズに読み終われます。ここらへんがハリスン独特です。ギター一本でベートーヴェンを弾いてしまうようなスタイルです。簡単ではないことを簡単そうに見せてしまう達者の技と言うべきでしょうか。

「大西洋横断トンネル万歳」もそうでしたが、この妙な軽妙さがハリスンの魅力です。こういうのを読ませてもらうと、他の作品も読もうかなと思わされます。

図書館に「死の世界」があるので、借りてみようかと思います。「テクニカラータイムマシン」も読みたいのですが、高騰していて手が出ません(苦笑)。